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変圧器の結線|V結線・Δ-Δ結線・Y-Δ結線の違いと出力の求め方
電験三種の変圧器の結線を、V結線・Δ-Δ結線・Y-Δ結線を中心に図解で整理します。線間電圧と相電圧の関係、30°の角変位、V結線の出力と利用率を、計算の例題4問で確かめながら学びます。
ここまでの記事(等価回路・電圧変動率・試験・効率)は、単相変圧器1台で考えてきました。送配電は三相なので、実際には単相変圧器を3台(または2台)つないで三相をつくります。このつなぎ方が変圧器の結線で、一次と二次をそれぞれ Y(星形)か Δ(三角)にします。この記事では、Δ-Δ・Y-Y・Y-Δ・V の各結線の特徴と、V 結線の出力・利用率の計算を、例題で確かめます。
変圧器の結線の全体像
- 変圧器の結線とは
- Δ-Δ結線
- 1台外しても V 結線で送れる。第3調波は Δ の中を回る
- Y-Y結線
- 中性点を接地できる。三次巻線 Δ で第3調波を逃がす
- Y-Δ結線・Δ-Y結線
- V結線
- 出力 3P1、利用率 0.866、Δ に対して 0.577
- 灯動共用と三相変圧器
変圧器の結線とは?単相3台で三相をつくる
三相交流の電源は、3本の線 a・b・c でつながります。変圧器でこれを降圧するには、単相変圧器を3台並べ、それぞれの一次巻線と二次巻線を、次のどちらかの形につなぎます。
- Y 結線(星形):3つの巻線の片端を1点(中性点)に集め、反対の端を線につなぐ
- Δ 結線(三角):3つの巻線を輪にして、つなぎ目を線につなぐ
形の名前はΔ-Y変換の記事と同じですが、あちらは抵抗の変換の話で、ここでは巻線のつなぎ方の名前です。
線と線の間の電圧を線間電圧 Vℓ、線を流れる電流を線電流 Iℓ、巻線1つぶんの電圧・電流を相電圧 Vp・相電流 Ip と呼びます。Y と Δ では、この2組の関係が次のように違います(図1)。なぜ 3 が出てくるかは、三相交流回路の計算でフェーザ図から確かめられます。
図1 Y 結線と Δ 結線。√3 が出るのは、Y では電圧、Δ では電流
要点は、Y は電圧が √3 倍、Δ は電流が √3 倍ということです。この2つの関係が、以降の結線の話をすべて支えます。
変圧器の結線は、一次側と二次側の組み合わせで呼びます。主なものの特徴は次のとおりです。
| 結線 | 特徴 | 使いどころ |
|---|
| Δ-Δ | 1台外しても V 結線で送れる | 配電、工場の受電 |
| Y-Y | 中性点を接地できる | 三次巻線とセットで使う |
| Y-Δ、Δ-Y | 30°の角変位が生じる | 変電所、発電所の昇降圧 |
| V | 2台で三相。出力は 1 台の √3 倍 | 配電(柱上) |
なお、変圧器1台の巻数比 a=N1/N2(変圧器の巻数比)は、結線によらず巻線どうしの比です。結線が変わるのは、巻数比と線間電圧の比の対応です。
Δ-Δ結線の特徴と、1台外したときの V 結線
Δ-Δ 結線は、一次も二次も Δ にします(図2)。一次の線間電圧は一次の相電圧と、二次の線間電圧は二次の相電圧と等しいので、線間電圧の比はそのまま巻数比 a です。
Vℓ2Vℓ1=Vp2Vp1=a
一次と二次の位相は同じ(角変位 0°)で、二次の線電流は相電流の 3 倍になります。
図2 Δ-Δ 結線。第3調波の励磁電流は、巻線の輪の中だけを回って線へ出ない
Δ-Δ 結線の利点は、次の2つです。
- 第3調波が問題にならない。鉄心の磁束を正弦波にするには、励磁電流に第3調波が必要です。第3調波は3相で同じ向きに同じ大きさで現れる(3×120∘=360∘ で位相がそろう)ので、3本の線には流れ出られません。Δ の輪の中なら、循環電流として流れます。
- 1台が故障しても三相を送れる。1台を外すと残りの2台は V 結線になり、そのまま三相を送り続けられます(図4)。ただし送れる容量は減ります。
1がいし21台目32台目43台目- がいし 高圧線を受ける
- 1台目 単相変圧器
- 2台目 単相変圧器
- 3台目 3台で三相1組
図3 電柱に並ぶ3台の柱上変圧器。3台で三相をつくる(写真はイメージ)
図4 Δ-Δ から1台外すと V 結線になる。三相は送れるが、出力は 1/√3 に下がる
Y-Y結線の特徴と三次巻線
Y-Y 結線は、一次も二次も Y にします(図5)。巻線にかかる電圧は線間電圧の 1/3 で済むので、高電圧側の絶縁に有利です。また、中性点を接地して、地絡事故の検出や電圧の安定に使えます(接地のしかたは中性点接地方式)。
ところが、Y-Y 結線には弱点があります。Δ のような電流の輪がないので、第3調波の励磁電流が流れる道がありません。中性点を接地すると中性線に第3調波が流れ、近くの通信線への誘導障害のもとになり、接地しないと電圧の波形がひずみます。
そこで、Y-Y 結線の変圧器には、三次巻線を足して Δ につなぐ方法がよく使われます(図5)。三次巻線の輪が第3調波の通り道になり、一次・二次の波形はひずみません。
図5 Y-Y 結線は中性点を接地できる。三次巻線 Δ が第3調波の通り道をつくる
Y-Δ結線・Δ-Y結線の線間電圧比と30°の角変位
Y-Δ 結線は、一次が Y、二次が Δ です。逆の Δ-Y 結線は、一次が Δ、二次が Y です。降圧の変電所では高圧側を Y(中性点を接地できる)、低圧側を Δ にします。発電所の昇圧用では、発電機側を Δ、送電側を Y にします。どちらも、高圧側が Y です。
巻数比 a と線間電圧の比は、同じになりません。Y-Δ では、一次の線間電圧は相電圧の 3 倍、二次の線間電圧は相電圧と同じだからです(図6)。
図6 Y-Δ 結線。一次側が Y なので、線間電圧の比は巻数比の √3 倍になる
Y-Δ: Vℓ2Vℓ1=Vp23Vp1=3aΔ-Y: Vℓ2Vℓ1=3Vp2Vp1=3a
もう1つの違いが角変位です。Y と Δ をつなぐと、一次と二次の線間電圧の位相が 30° ずれます。この位相のずれを角変位といいます(図7)。
図7 Y-Δ の角変位。この例では、低圧側の線間電圧が高圧側より 30° 遅れる
JIS や IEC の記号では、結線を Yd1(高圧側 Y、低圧側 Δ、低圧側が 30° 遅れ)のように書きます。大文字が高圧側、小文字が低圧側、数字は「30° × 数字」だけ低圧側が遅れることを表します。Δ-Y 結線の Dy11 は、低圧側が 30° 進みます。「Y-Δ は必ず30°遅れ」と決めつけず、問題文の指示を読みます。角変位が違う変圧器どうしは並べられません。この話は次の記事で使います。
1ブッシング2放熱器3端子箱4コンサベータ- ブッシング 3本で三相の3線
- 放熱器 油を冷やす
- 端子箱 計器の配線を集める
- コンサベータ 油の膨張を受ける
図8 変電所の三相変圧器。3本のブッシングが三相の3線に対応する(写真はイメージ)
V結線の出力と利用率
V 結線は、単相変圧器2台で三相をつくる結線です。Δ-Δ の3台から1台を外した形で、巻線が V の字になるのでこの名前が付きました(図10)。電柱の上の変圧器が2台だけ、というのがこの結線です(図9)。
1腕金21台目32台目4低圧の電線- 腕金 高圧線を支える
- 1台目 単相変圧器
- 2台目 単相変圧器
- 低圧の電線 二次側の配線
図9 電柱の上の2台の変圧器。V 結線で三相をつくる(写真はイメージ)
図10 V 結線。2台の巻線で、3つの線間電圧がそろう。V と I は1台の定格電圧と定格電流
1台の定格電圧を V、定格電流を I とします。V 結線の線電流は巻線の電流と同じ I、線間電圧は V なので、三相の出力は次のとおりです。
SV=3VI=3P1
P1=VI は単相変圧器1台の容量です。2台で 2P1 の容量がありながら、出力は 3P1≒1.73P1 にとどまります。理由は、力率 1 の平衡負荷のとき、各台の電圧と電流が 30° ずれるからです。1台が出せる有効電力は VIcos30∘ なので、2台で 2VIcos30∘=3VI になります。
出力を、何に対する割合で見るかで、2つの値があります(図11)。
利用率=2P13P1=23≒0.866Δ に対する出力比=3P13P1=31≒0.577
図11 V 結線の2つの割合。分母が 2P1 なら 86.6 %、3P1 なら 57.7 %
灯動共用の V 結線と三相変圧器
電柱の上の変圧器は、大小の2台で V 結線をつくり、三相の動力と単相の電灯の両方に供給することがあります。これが灯動共用です。大きいほうの巻線の中点から線を出せば、単相 3 線式の 100/200 V が取れます。
容量の考え方は次のとおりです。三相の動力負荷 P3 は、V 結線の2台で分け合い、各台が P3/3 を受け持ちます。電灯の単相負荷 PL は、共用の1台(中点を出した大きいほう)だけが受け持ちます。
- 動力専用の変圧器:P3/3 以上
- 共用の変圧器:P3/3+PL 以上(位相の違いを無視した安全側の見積もり)
1計器窓2配線3変圧器- 計器窓 電圧・電流を見る
- 配線 高圧と低圧のケーブル
- 変圧器 箱の中に収まる
図12 ビルの電気室のキュービクル。内部に三相変圧器が収まる(写真はイメージ)
結線の組み合わせを、1つの鉄心にまとめたのが三相変圧器です。1つの鉄心に3組の巻線を巻き、結線はケースの中で済ませます。単相3台より、小型・軽量で安く、効率もよくなります。一方、1相が故障すると全体が止まり、V 結線で運転を続けることはできません。変電所の大型変圧器(図8)はほとんどが三相変圧器です。
変圧器の結線の例題
解く前に、使う式を表で確かめます。
| 求めるもの | 式 |
|---|
| Y-Δ の線間電圧比 | 3a |
| Δ-Y の線間電圧比 | a/3 |
| V 結線の出力 | 3P1 |
| V 結線の利用率 | 0.866 |
解答と解説を見る
(1) 一次の相電圧は線間電圧の 1/3 です。二次は Δ なので、二次の相電圧がそのまま二次の線間電圧です。
Vp1=311000≒6351 [V]Vℓ2=Vp2=306351≒212 [V]答え:約 212 V(線間電圧の比は 3a=51.96)
(2) 三相の皮相電力は 3VℓIℓ です。
Iℓ2=3×211.790×103≒245 [A]Ip2=3Iℓ2≒142 [A]答え:線電流 約 245 A、巻線の電流 約 142 A
(3) Δ-Y では、一次が Δ なので一次の相電圧は 11000 V、二次の相電圧は 11000/30 です。二次は Y なので、線間電圧は相電圧の 3 倍です。
Vℓ2=3×3011000≒635 [V]答え:約 635 V(線間電圧の比は a/3)
解答と解説を見る
(1) 出力は 3P1 です。
SV=3×30≒52.0 [kV⋅A](2) 2台の容量の和は 60 kV·A です。
6052.0≒0.866(86.6 %)(3) 3台 Δ-Δ の出力は 90 kV·A です。
9052.0≒0.577(57.7 %)(4) 有効電力は、皮相電力に力率を掛けます。
P=52.0×0.8≒41.6 [kW]
解答と解説を見る
(1) 3台なので 3×50=150 [kV⋅A] です。
(2) V 結線の出力は 3P1 です。
3×50≒86.6 [kV⋅A](3) V 結線の出力は、各台の受け持ちの 3 倍です。各台の受け持ちは次のとおりです。
3120≒69.3 [kV⋅A]5069.3≒1.39(139 %)答え:各台 約 69.3 kV·A で、定格の約 139 % の過負荷になる。負荷を 86.6 kV·A 以下に減らす必要がある。
解答と解説を見る
動力は2台で分け合い、各台が P3/3 を受け持ちます。
330≒17.3 [kV⋅A]17.3+10=27.3 [kV⋅A]答え:動力専用 約 17.3 kV·A 以上、共用 約 27.3 kV·A 以上
電灯は共用の1台だけが受け持つので、共用のほうが大きくなります。位相の違いを考えると、実際の必要容量は和より少し小さくなるので、この見積もりは安全側です。
よくある質問
Δ-Δ 結線と Y-Y 結線は、どう使い分けますか。
Δ-Δ は第3調波が輪の中を回るので波形がひずまず、1台外しても V 結線で運転できます。Y-Y は中性点を接地でき、巻線の電圧も下げられますが、第3調波の道が無いので三次巻線 Δ とセットで使います。Y-Δ(Δ-Y)は、両方の利点を取り込んだ結線です。
V 結線の利用率が 100 % にならないのは、なぜですか。
力率 1 の平衡負荷のとき、各台の電圧と電流の位相が 30° ずれるからです。1台が出せる有効電力は VIcos30∘ になり、2台でも 2VI×0.866≒1.73VI にしかなりません。出力が 3P1 で、2台の容量の和の 86.6 % です。
Y-Δ で、巻数比と線間電圧比が違うのは、なぜですか。
巻数比は巻線1台の比(相電圧の比)で、線間電圧は Y では相電圧の 3 倍、Δ では相電圧と同じだからです。Y-Δ では一次の線間電圧だけが 3 倍になるので、線間電圧の比は 3a になります。
三相変圧器と、単相変圧器3台は、何が違いますか。
三相変圧器は、1つの鉄心に3組の巻線をまとめたもので、小型・軽量で効率もよく、費用も安く済みます。単相3台は、1台が故障しても V 結線で運転でき、予備も1台で済む利点があります。
思い出してみよう
答えを見る前に、まず自分で思い出してからタップしてください。
Y 結線と Δ 結線で、√3 が出る量はそれぞれ何ですか?
Y は線間電圧が相電圧の √3 倍、Δ は線電流が相電流の √3 倍です。
Δ-Δ 結線で、第3調波が問題にならないのは、なぜですか?
第3調波の電流が、Δ の輪の中を回って線へ出ないからです。
Y-Δ 結線の線間電圧の比は、巻数比 a を使って、どう書けますか?
3a です。Δ-Y なら a/3 です。
Y-Δ 結線で、一次と二次の線間電圧は、何度ずれますか?
30° ずれます。この例の Yd1 では、低圧側が 30° 遅れます。
V 結線の出力と、2つの割合は?
出力は 3P1。2台の容量の和に対して 0.866、Δ-Δ に対して 0.577 です。
Δ-Δ から1台を外したとき、送れる容量は、元の何倍ですか?
1/3 倍、約 57.7 % です。
まとめ
- 結線は、一次・二次をそれぞれ Y か Δ にする。Y は電圧が √3 倍、Δ は電流が √3 倍
- Δ-Δ は第3調波が輪の中を回り、1台外しても V 結線で送れる
- Y-Y は中性点を接地できるが、第3調波のため三次巻線 Δ を足す
- Y-Δ(Δ-Y)の線間電圧比は 3a(a/3)で、30° の角変位がある
- V 結線の出力は 3P1。2台の和に対して 0.866、Δ-Δ に対して 0.577
2台以上の変圧器を同じ母線に並べるときは、角変位や巻数比をそろえる必要があります。これは次の変圧器の並行運転で扱います。巻線1台の比は変圧器の巻数比、容量と損失の関係は変圧器の損失と効率に戻って確かめましょう。