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理論電気理論 / 三相交流14分で読めます

三相交流回路の計算|Y結線・Δ結線の線間電圧・相電流と三相電力

電験三種の三相交流回路を図解で整理します。Y結線とΔ結線の線間電圧・線電流の関係、一相分の等価回路の解き方、Δ-Y変換、三相電力 P=√3×線間電圧×線電流×cosθ を例題つきで確認できます。

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青空を背に、下から見上げた送電鉄塔の写真
この記事の目次
  1. 三相交流回路とは
  2. 電線が3本で足りる理由
  3. Y 結線の線間電圧と線電流
  4. 中性点に電流は流れるか
  5. Δ 結線の線電流と相電流
  6. Y 結線と Δ 結線の比較
  7. 一相分の等価回路で解く手順
  8. Δ 負荷を Y に直す
  9. 三相電力の求め方
  10. 三相交流回路の例題
  11. よくある質問
  12. 線間電圧と相電圧は、どちらを使えばよいですか。
  13. 三相電力の式に 3\sqrt{3} が付くのはなぜですか。
  14. 同じ負荷なら、Y 結線と Δ 結線のどちらの電力が大きいですか。
  15. 中性線は必要ですか。
  16. まとめ
図解でわかる 電験三種 理論 1 直列回路 の表紙理論を図解で読む図解でわかる 電験三種 理論 1
直列回路
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送電線や工場の電動機の配線は、電線が3本で1組です。三相交流は、位相が 120° ずつずれた3つの交流を使うことで、少ない電線で多くの電力を送れ、電動機も滑らかに回せます。この記事では、Y 結線と Δ 結線の関係から、一相分の等価回路、三相電力までを順に確認します。

三相交流回路の全体像
  • 三相交流とは
    • 位相が 120° ずつずれた3つの電圧で、和は常に 0
    • 平衡(3相が同じ)なら、1相分を調べれば全体がわかる
  • Y 結線と Δ 結線
    • Y 結線は、線間電圧 = √3 × 相電圧、線電流 = 相電流
    • Δ 結線は、線間電圧 = 相電圧、線電流 = √3 × 相電流
  • 一相分の等価回路
    • Δ を Y に直し、相電圧 = 線間電圧 ÷ √3 で1相分を解く
    • Δ から Y へ直すと、インピーダンスは 1÷3
  • 三相電力
    • P = √3 × 線間電圧 × 線電流 × cosθ
    • 3相の合計の電力は、時間によらず一定

三相交流回路とは

図1は、電柱の上の写真です。腕金に白いがいしが3個並び、電線が3本、柱上変圧器につながっています。街なかの配電線は、このように3本で1組になっているのがふつうです。この3本で送る交流が三相交流です。

コンクリートの電柱の上で、腕金に白いがいし3個が並び、黒い電線3本が灰色の円筒形の柱上変圧器につながる写真
  1. がいし 電線を腕金から絶縁して支える
  2. 電線 変圧器からの3本で、三相の1組
  3. 柱上変圧器 電圧を下げて需要家へ送る
図1 電柱の上。3本の電線が1組で、柱上変圧器につながる(写真はイメージ)

三相交流は、大きさと周波数が同じで、位相が 120° ずつずれた3つの交流電圧です。a 相を基準にすると、次のように表せます。

va=2 Vsin⁡ωtvb=2 Vsin⁡(ωt−120∘)vc=2 Vsin⁡(ωt−240∘)\begin{aligned} v_a &= \sqrt{2}\,V\sin\omega t \\ v_b &= \sqrt{2}\,V\sin(\omega t - 120^\circ) \\ v_c &= \sqrt{2}\,V\sin(\omega t - 240^\circ) \end{aligned}

図2のように、a 相、b 相、c 相の順に山がきます。どの瞬間も、3つの電圧を足すと 0 です。

va+vb+vc=0v_a + v_b + v_c = 0
ωt 0° 120° 240° 360° a相 b相 c相 最大 ωt=90° では 1 +(−0.5)+(−0.5)= 0 どの瞬間も a + b + c = 0
図2 三相交流の電圧波形。3つの正弦波は 120° ずつずれ、どの瞬間も足すと 0

たとえば ωt=90∘\omega t = 90^\circ では、a 相が最大値 2V\sqrt{2}V、b 相と c 相はどちらも −2V/2-\sqrt{2}V/2 で、合計は 0 になります。

大きさが等しく 120° ずつずれた電源を対称三相交流、3つのインピーダンスが等しい負荷を平衡負荷といいます。この記事では、特に断りがなければ、対称な電源と平衡負荷を考えます。

電線が3本で足りる理由

3つの電圧の和が 0 なので、平衡負荷では3つの電流の和も 0 です。ある瞬間に a 相から出た電流は、b 相と c 相から戻ります。3本の線が互いに行きと帰りを兼ねるので、戻り専用の線は要りません。

同じ電圧、同じ電力、同じ線路損失、力率 1 で比べると、三相3線式の電線の総量は、単相2線式の 3/4 で済みます。電線は3本になりますが、同じ電力を送るときの電流が単相の 1/31/\sqrt{3} になり、1本あたりを細くできるからです。

Y 結線の線間電圧と線電流

三相回路には、電圧や電流を表す言葉が2通りあります。相は負荷の1つ分(1つのインピーダンス)、線は電線です。

用語意味
相電圧 VpV_p負荷1相分にかかる電圧
線間電圧 VℓV_\ell線と線の間の電圧
相電流 IpI_p負荷1相分に流れる電流
線電流 IℓI_\ell電線に流れる電流

Y 結線は、3つのインピーダンスの一端を1点(中性点)に集め、もう一端を端子 a、b、c につなぐ結線です。形が星(スター)に似ているので、スター結線ともいいます。図3のとおり、電線に流れる電流はそのまま負荷1相分を流れるので、線電流と相電流は等しくなります。

中性点 N a b c 線電流 Iℓ 相電流 Ip 相電圧 Vp 線間電圧 Vℓ=√3 Vp
図3 Y 結線。線電流は相電流と同じ。線間電圧は相電圧の √3 倍

線間電圧は、相電圧の差です。a 相の相電圧を基準 V˙a=Vp∠0∘\dot{V}_a = V_p\angle 0^\circ とすると、b 相は 120° 遅れた

V˙b=Vp(−12−j32)\dot{V}_b = V_p\left(-\frac{1}{2} - j\frac{\sqrt{3}}{2}\right)

です。端子 a と b の間の線間電圧 V˙ab\dot{V}_{ab} は、

V˙ab=V˙a−V˙b=Vp(32+j32)=3 Vp∠30∘\begin{aligned} \dot{V}_{ab} &= \dot{V}_a - \dot{V}_b \\ &= V_p\left(\frac{3}{2} + j\frac{\sqrt{3}}{2}\right) \\ &= \sqrt{3}\,V_p\angle 30^\circ \end{aligned}

になります。複素数の計算は、電験の複素数の使い方で確かめられます。図4のように、V˙ab\dot{V}_{ab} は V˙a\dot{V}_a と −V˙b-\dot{V}_b を足した平行四辺形の長い対角線です。

Va Vb Vc −Vb Vab =√3 Vp 30° Vab=Va−Vb(平行四辺形の対角線) Vab は Va より 30° 進む
図4 Y 結線の電圧のフェーザ。線間電圧 Vab は Va より 30° 進み、大きさは √3 倍

Y 結線の関係をまとめると、次のとおりです。

Vℓ=3 VpIℓ=Ip\begin{aligned} V_\ell &= \sqrt{3}\,V_p \\ I_\ell &= I_p \end{aligned}

線間電圧は相電圧の 3\sqrt{3} 倍で、位相は相電圧より 30∘30^\circ 進みます。たとえば線間電圧が 200 [V]200\,\mathrm{[V]} なら、相電圧は 200/3≒115 [V]200/\sqrt{3} \fallingdotseq 115\,\mathrm{[V]} です。

中性点に電流は流れるか

平衡負荷では、3つの相電流は大きさが等しく 120∘120^\circ ずつずれているので、合計は 0 です。電源の中性点と負荷の中性点を線でつないでも、その線には電流が流れません。負荷が不平衡だと、合計が 0 にならず、中性線に電流が流れます。

Δ 結線の線電流と相電流

Δ 結線は、3つのインピーダンスを三角形(デルタ)につなぎ、頂点を端子 a、b、c にする結線です。三相電動機の端子箱には、図5のように端子が6個並ぶものがあります。端子どうしを板でつなぐ位置を変えると、同じ電動機を Y 結線にも Δ 結線にもできます。

電動機の端子箱の内部で、真鍮色の端子ボルトが2段3列に並び、各列の上下が真鍮の板でつながれて、太い黒ケーブルが3本出ている写真
  1. 端子 電動機のコイルの端につながる
  2. つなぎ板 端子どうしを結ぶ
  3. ケーブル 電源から3本で届く
図5 三相電動機の端子箱。6個の端子を板でつなぐ(写真はイメージ)

図6のとおり、Δ 結線では各インピーダンスが2本の線の間につながります。そのため、相電圧は線間電圧と同じです。一方、端子 a から入る線電流は、2つの相電流に分かれます。

Z Z Z a b c 線電流 Iℓ 相電流 Ip 相電圧 Vp=線間電圧 Vℓ
図6 Δ 結線。相電圧は線間電圧と同じ。線電流は相電流の √3 倍

キルヒホッフの電流則を端子 a に当てると、I˙a=I˙ab−I˙ca\dot{I}_a = \dot{I}_{ab} - \dot{I}_{ca} です。I˙ab=Ip∠0∘\dot{I}_{ab} = I_p\angle 0^\circ、I˙ca=Ip∠120∘=Ip(−12+j32)\dot{I}_{ca} = I_p\angle 120^\circ = I_p\left(-\dfrac{1}{2} + j\dfrac{\sqrt{3}}{2}\right) とすると、

I˙a=I˙ab−I˙ca=Ip(32−j32)=3 Ip∠(−30∘)\begin{aligned} \dot{I}_a &= \dot{I}_{ab} - \dot{I}_{ca} \\ &= I_p\left(\frac{3}{2} - j\frac{\sqrt{3}}{2}\right) \\ &= \sqrt{3}\,I_p\angle(-30^\circ) \end{aligned}

です。図7のフェーザ図でも、I˙a\dot{I}_a は平行四辺形の長い対角線になります。

Iab Ibc Ica −Ica Ia =√3 Ip 30° Ia=Iab−Ica(平行四辺形の対角線) Ia は Iab より 30° 遅れる
図7 Δ 結線の電流のフェーザ。線電流 Ia は Iab より 30° 遅れ、大きさは √3 倍

Δ 結線の関係をまとめると、次のとおりです。

Vℓ=VpIℓ=3 Ip\begin{aligned} V_\ell &= V_p \\ I_\ell &= \sqrt{3}\,I_p \end{aligned}

線電流は相電流の 3\sqrt{3} 倍で、位相は相電流より 30∘30^\circ 遅れます。

Y 結線と Δ 結線の比較

2つの結線の関係を並べると、次のとおりです。

項目Y 結線Δ 結線
線間電圧Vℓ=3 VpV_\ell = \sqrt{3}\,V_pVℓ=VpV_\ell = V_p
線電流Iℓ=IpI_\ell = I_pIℓ=3 IpI_\ell = \sqrt{3}\,I_p
位相VℓV_\ell が 30∘30^\circ 進むIℓI_\ell が 30∘30^\circ 遅れる
中性点あるない

覚え方は、「3\sqrt{3} 倍になるのは、Y では電圧、Δ では電流」です。位相が進むか遅れるかは、迷ったらフェーザ図を描き、引き算の向きから決めます。

三相変圧器のコイルも、Y 結線と Δ 結線のどちらかでつなぎます。図8は、鉄心に巻いたコイルが3つ並ぶ三相変圧器です。コイルのつなぎ方による違いは、変圧器の結線で確かめられます。

灰色の鉄心に、赤茶色の円筒形のコイルが3つ横に並んだ三相変圧器の写真
  1. コイル 1つが1相分
  2. 鉄心 磁束の通り道
  3. 端子 電線をつなぐ部分
図8 3つのコイルが並ぶ三相変圧器。1つが1相分(写真はイメージ)

一相分の等価回路で解く手順

平衡三相回路では、3つの相が同じ大きさで 120° ずつずれているだけです。そのため、1相分だけ計算し、残りの相は位相をずらして考えれば足ります。図9のように、電源も負荷も Y 結線とみなし、中性点どうしを(想像上の線で)結んだ単相回路にします。

~ Vp Z 電流 I 中性点どうしをつなぐ想像上の線 I = Vp ÷ Z
図9 平衡三相は、Y 結線の 1 相分(相電圧 Vp とインピーダンス Z)だけで解ける

解く手順は次のとおりです。

  1. 負荷が Δ 結線なら、Y 結線に直す(各相のインピーダンスを 1/3 にする)
  2. 線間電圧 VℓV_\ell から、相電圧 Vp=Vℓ/3V_p = V_\ell/\sqrt{3} を求める
  3. 1相分の電流 I=Vp/ZI = V_p/Z を求める
  4. Y 結線では線電流 IℓI_\ell が相電流 II に等しい
  5. 電力は、1相分を3倍する

式でまとめると、

Iℓ=VpZ=Vℓ3 ZI_\ell = \frac{V_p}{Z} = \frac{V_\ell}{\sqrt{3}\,Z}

です。Δ 結線の負荷が1つだけなら、Y に直さず、Ip=Vℓ/ZI_p = V_\ell/Z、Iℓ=3 IpI_\ell = \sqrt{3}\,I_p と解いても同じ結果になります。線路のインピーダンスを含む計算にも、この一相分の考え方を使います。三相3線式の電圧降下の式も、一相分の等価回路から出てきます。

Δ 負荷を Y に直す

並列につながった Δ 負荷と Y 負荷をまとめて解くときは、Δ を Y に直します。一般の Δ-Y 変換は、

Z˙a=Z˙abZ˙caZ˙ab+Z˙bc+Z˙ca\dot{Z}_a = \frac{\dot{Z}_{ab}\dot{Z}_{ca}}{\dot{Z}_{ab} + \dot{Z}_{bc} + \dot{Z}_{ca}}

です。3辺が等しい Δ 負荷(Z˙Δ\dot{Z}_\Delta)なら、

Z˙Y=Z˙Δ23Z˙Δ=Z˙Δ3\begin{aligned} \dot{Z}_Y &= \frac{\dot{Z}_\Delta^2}{3\dot{Z}_\Delta} \\ &= \frac{\dot{Z}_\Delta}{3} \end{aligned}

となり、各相のインピーダンスが 1/3 の Y 負荷に置き換わります。図10のとおりです。

ZΔ ZΔ ZΔ a b c ZY a ZY b ZY c 換算 ZY=ZΔ ÷ 3 (3 辺とも同じ ZΔ のとき)
図10 3 辺が等しい Δ 負荷は、各相が 1/3 の Y 負荷に置き換えられる

換算しても線電流が変わらないことは、次のように確かめられます。Δ のままなら、Ip=Vℓ/ZΔI_p = V_\ell/Z_\Delta、Iℓ=3 IpI_\ell = \sqrt{3}\,I_p です。Y に直すと、Iℓ=(Vℓ/3)/(ZΔ/3)I_\ell = (V_\ell/\sqrt{3})/(Z_\Delta/3) です。

Iℓ=3 VℓZΔIℓ=Vℓ/3ZΔ/3=3 VℓZΔ\begin{aligned} I_\ell &= \sqrt{3}\,\frac{V_\ell}{Z_\Delta} \\ I_\ell &= \frac{V_\ell/\sqrt{3}}{Z_\Delta/3} = \sqrt{3}\,\frac{V_\ell}{Z_\Delta} \end{aligned}

どちらも同じ値になります。

三相電力の求め方

三相電力は、1相分の電力を3倍すれば求まります。1相分の電力は、相電圧 VpV_p、相電流 IpI_p、それらの位相差 θ\theta で決まります。

P=3VpIpcos⁡θP = 3V_pI_p\cos\theta

この θ\theta は、負荷1相分のインピーダンスの偏角です。これを線間電圧 VℓV_\ell と線電流 IℓI_\ell で書き直します。Y 結線は Vp=Vℓ/3V_p = V_\ell/\sqrt{3}、Ip=IℓI_p = I_\ell なので、

P=3⋅Vℓ3⋅Iℓcos⁡θ=3 VℓIℓcos⁡θ\begin{aligned} P &= 3 \cdot \frac{V_\ell}{\sqrt{3}} \cdot I_\ell\cos\theta \\ &= \sqrt{3}\,V_\ell I_\ell\cos\theta \end{aligned}

です。Δ 結線は Vp=VℓV_p = V_\ell、Ip=Iℓ/3I_p = I_\ell/\sqrt{3} なので、

P=3Vℓ⋅Iℓ3cos⁡θ=3 VℓIℓcos⁡θ\begin{aligned} P &= 3V_\ell \cdot \frac{I_\ell}{\sqrt{3}}\cos\theta \\ &= \sqrt{3}\,V_\ell I_\ell\cos\theta \end{aligned}

となり、どちらの結線でも同じ式になります。無効電力と皮相電力も同様に、

P=3 VℓIℓcos⁡θ [W]Q=3 VℓIℓsin⁡θ [var]S=3 VℓIℓ [V⋅A]\begin{aligned} P &= \sqrt{3}\,V_\ell I_\ell\cos\theta\ \mathrm{[W]} \\ Q &= \sqrt{3}\,V_\ell I_\ell\sin\theta\ \mathrm{[var]} \\ S &= \sqrt{3}\,V_\ell I_\ell\ \mathrm{[V\cdot A]} \end{aligned}

です。意味は有効電力・無効電力・皮相電力の記事のとおりで、S2=P2+Q2S^2 = P^2 + Q^2、力率は cos⁡θ=P/S\cos\theta = P/S です。負荷1相分の抵抗 RR とリアクタンス XX がわかっているときは、相電流 IpI_p を使って P=3Ip2RP = 3I_p^2R、Q=3Ip2XQ = 3I_p^2X でも求まります。

三相電力には、もう1つ大切な性質があります。図11は、抵抗負荷の各相の瞬時電力です。1相の電力は、単相と同じように1周期に2回脈動します。しかし3つの波は位相がずれていて、足すと常に 3VI3VI で一定になります。電動機の回転が滑らかなのは、このことも理由のひとつです。

ωt VI 2VI 3VI 0° 180° 360° 三相の合計 = 3VI(一定) b a c b a c 各相は脈動するが、合計は一定(抵抗負荷)
図11 各相の電力は脈動するが、3 つを足すと 3VI で一定(抵抗負荷、cosθ=1 の場合)

三相の電力は、図12のような分電盤から、3本1組の電線で工場の電動機などに送られます。

扉を開けた分電盤の内部で、銅色のバーが3本縦に並び、左右に黒い配線用遮断器とケーブルが並ぶ写真
  1. 銅のバー 電流が流れる導体
  2. 遮断器 過電流で回路を切る
  3. ケーブル 3本1組で負荷へ送る
図12 工場の分電盤。三相の負荷へは3本1組の電線で電力を送る(写真はイメージ)

三相交流回路の例題

問題で求めるものによって、使う関係を選びます。

場面使う関係
Y 結線Vp=Vℓ/3V_p = V_\ell/\sqrt{3}、Iℓ=IpI_\ell = I_p
Δ 結線Vp=VℓV_p = V_\ell、Ip=Iℓ/3I_p = I_\ell/\sqrt{3}
電力P=3 VℓIℓcos⁡θP = \sqrt{3}\,V_\ell I_\ell\cos\theta
解答と解説を見る

1相分のインピーダンスの大きさは、

Z=62+82=10 [Ω]Z = \sqrt{6^2 + 8^2} = 10\,\mathrm{[\Omega]}

です。相電圧は、

Vp=2003≒115 [V]V_p = \frac{200}{\sqrt{3}} \fallingdotseq 115\,\mathrm{[V]}

なので、線電流は相電流と等しく、

Iℓ=VpZ≒11.5 [A]I_\ell = \frac{V_p}{Z} \fallingdotseq 11.5\,\mathrm{[A]}

です。Iℓ2=400/3I_\ell^2 = 400/3 を使うと、

P=3Iℓ2R=3×4003×6=2400 [W]\begin{aligned} P &= 3I_\ell^2R \\ &= 3 \times \frac{400}{3} \times 6 \\ &= 2400\,\mathrm{[W]} \end{aligned}Q=3Iℓ2XL=3×4003×8=3200 [var]\begin{aligned} Q &= 3I_\ell^2X_L \\ &= 3 \times \frac{400}{3} \times 8 \\ &= 3200\,\mathrm{[var]} \end{aligned}S=P2+Q2=4000 [V⋅A]\begin{aligned} S &= \sqrt{P^2 + Q^2} \\ &= 4000\,\mathrm{[V\cdot A]} \end{aligned}

です。

検算すると、力率は cos⁡θ=6/10=0.6\cos\theta = 6/10 = 0.6 で、3×200×11.547×0.6=2400 [W]\sqrt{3} \times 200 \times 11.547 \times 0.6 = 2400\,\mathrm{[W]} となり、一致します。

解答と解説を見る

インピーダンスの大きさは、

Z=242+182=30 [Ω]Z = \sqrt{24^2 + 18^2} = 30\,\mathrm{[\Omega]}

です。Δ 結線では相電圧が線間電圧と同じなので、

Ip=20030≒6.67 [A]\begin{aligned} I_p &= \frac{200}{30} \\ &\fallingdotseq 6.67\,\mathrm{[A]} \end{aligned}

線電流は、

Iℓ=3 Ip≒11.5 [A]\begin{aligned} I_\ell &= \sqrt{3}\,I_p \\ &\fallingdotseq 11.5\,\mathrm{[A]} \end{aligned}

です。力率は cos⁡θ=24/30=0.8\cos\theta = 24/30 = 0.8 で、

P=3Ip2R=3×(203)2×24=3200 [W]\begin{aligned} P &= 3I_p^2R \\ &= 3 \times \left(\frac{20}{3}\right)^2 \times 24 \\ &= 3200\,\mathrm{[W]} \end{aligned}

です。

検算すると、3×200×11.547×0.8=3200 [W]\sqrt{3} \times 200 \times 11.547 \times 0.8 = 3200\,\mathrm{[W]} で、一致します。

解答と解説を見る

Δ 負荷を Y に直すと、各相は

303=10 [Ω]\frac{30}{3} = 10\,\mathrm{[\Omega]}

です。各相に 10 Ω10\,\Omega が2つ並列になるので、合成抵抗は 5 Ω5\,\Omega です。相電圧は 200/3200/\sqrt{3} なので、

Iℓ=200/35=403≒23.1 [A]\begin{aligned} I_\ell &= \frac{200/\sqrt{3}}{5} \\ &= \frac{40}{\sqrt{3}} \\ &\fallingdotseq 23.1\,\mathrm{[A]} \end{aligned}

消費電力は、

P=3Iℓ2R=3×16003×5=8000 [W]\begin{aligned} P &= 3I_\ell^2R \\ &= 3 \times \frac{1600}{3} \times 5 \\ &= 8000\,\mathrm{[W]} \end{aligned}

です。

検算すると、Y 側は 3×(400/3)×10=4000 [W]3 \times (400/3) \times 10 = 4000\,\mathrm{[W]}、Δ 側は 3×(20/3)2×30=4000 [W]3 \times (20/3)^2 \times 30 = 4000\,\mathrm{[W]} で、合計 8000 [W]8000\,\mathrm{[W]} となり、一致します。

解答と解説を見る

Y 結線では、抵抗1個にかかる電圧は 200/3200/\sqrt{3} です。

Iℓ=200/320≒5.77 [A]\begin{aligned} I_\ell &= \frac{200/\sqrt{3}}{20} \\ &\fallingdotseq 5.77\,\mathrm{[A]} \end{aligned}P=3Iℓ2R=3×1003×20=2000 [W]\begin{aligned} P &= 3I_\ell^2R \\ &= 3 \times \frac{100}{3} \times 20 \\ &= 2000\,\mathrm{[W]} \end{aligned}

Δ 結線では、抵抗1個に 200 [V]200\,\mathrm{[V]} がかかります。

Ip=20020=10 [A]Iℓ=3×10≒17.3 [A]\begin{aligned} I_p &= \frac{200}{20} = 10\,\mathrm{[A]} \\ I_\ell &= \sqrt{3} \times 10 \\ &\fallingdotseq 17.3\,\mathrm{[A]} \end{aligned}P=3Ip2R=3×102×20=6000 [W]\begin{aligned} P &= 3I_p^2R \\ &= 3 \times 10^2 \times 20 \\ &= 6000\,\mathrm{[W]} \end{aligned}

つまり、同じ抵抗でも Δ 結線のほうが、線電流も消費電力も 3 倍になります。

検算すると、3×200×5.77≒2000 [W]\sqrt{3} \times 200 \times 5.77 \fallingdotseq 2000\,\mathrm{[W]}、3×200×17.3≒6000 [W]\sqrt{3} \times 200 \times 17.3 \fallingdotseq 6000\,\mathrm{[W]} で、一致します。

よくある質問

線間電圧と相電圧は、どちらを使えばよいですか。

電源の電圧は、断りがなければ線間電圧です。相電圧が必要なときは、Y 結線なら Vℓ/3V_\ell/\sqrt{3}、Δ 結線なら線間電圧と同じ値です。1相分の計算に入る前に、問題の電圧がどちらなのかを確かめてください。

三相電力の式に 3\sqrt{3} が付くのはなぜですか。

P=3VpIpcos⁡θP = 3V_pI_p\cos\theta を、線間電圧と線電流で書き直すためです。Y 結線では電圧が 1/31/\sqrt{3}、Δ 結線では電流が 1/31/\sqrt{3} になるので、3×(1/3)=33 \times (1/\sqrt{3}) = \sqrt{3} が残ります。

同じ負荷なら、Y 結線と Δ 結線のどちらの電力が大きいですか。

Δ 結線のほうが大きく、Y 結線の3倍です。Δ 結線では負荷にかかる電圧が 3\sqrt{3} 倍になり、電流も 3\sqrt{3} 倍になるので、電力は 3×3=3\sqrt{3} \times \sqrt{3} = 3 倍です。この性質を使い、電動機の始動電流を抑えるために、始動のときだけ Y 結線にする方法(Y-Δ 始動)もあります。

中性線は必要ですか。

平衡負荷なら、中性線の電流は 0 なので要りません。負荷が不平衡だと中性線に電流が流れます。そのため、三相4線式のように中性線を引く配線もあります。

思い出してみよう

答えを見る前に、まず自分で思い出してからタップしてください。

三相交流の3つの電圧は、位相が何度ずつずれていて、足すとどうなりますか?

120∘120^\circ ずつずれていて、どの瞬間も足すと 0 になります。

Y 結線の線間電圧、線電流、位相の関係は?

Vℓ=3 VpV_\ell = \sqrt{3}\,V_p(相電圧より 30∘30^\circ 進む)、Iℓ=IpI_\ell = I_p です。

Δ 結線の線間電圧、線電流、位相の関係は?

Vℓ=VpV_\ell = V_p、Iℓ=3 IpI_\ell = \sqrt{3}\,I_p(相電流より 30∘30^\circ 遅れる)です。

3辺が等しい Δ 負荷を Y に直すと、インピーダンスはどうなりますか?

1/31/3 になります(Z˙Y=Z˙Δ/3\dot{Z}_Y = \dot{Z}_\Delta/3)。

三相電力の式と、θ\theta の意味は?

P=3 VℓIℓcos⁡θP = \sqrt{3}\,V_\ell I_\ell\cos\theta で、θ\theta は相電圧と相電流の位相差です。

同じ抵抗3個を、同じ線間電圧につなぐと、Δ 結線の消費電力は Y 結線の何倍ですか?

3倍です。

まとめ

  • 三相交流は、位相が 120∘120^\circ ずつずれた3つの交流で、和は常に 0。平衡なら1相分を調べれば全体がわかる
  • Y 結線は Vℓ=3 VpV_\ell = \sqrt{3}\,V_p(30∘30^\circ 進む)、Iℓ=IpI_\ell = I_p。Δ 結線は Vℓ=VpV_\ell = V_p、Iℓ=3 IpI_\ell = \sqrt{3}\,I_p(30∘30^\circ 遅れる)
  • 一相分の等価回路は、Δ を Y に直し(3辺が等しければインピーダンスが 1/31/3)、Vp=Vℓ/3V_p = V_\ell/\sqrt{3} で解く
  • 三相電力は P=3 VℓIℓcos⁡θ [W]P = \sqrt{3}\,V_\ell I_\ell\cos\theta\ \mathrm{[W]}、Q=3 VℓIℓsin⁡θ [var]Q = \sqrt{3}\,V_\ell I_\ell\sin\theta\ \mathrm{[var]}、S=3 VℓIℓ [V⋅A]S = \sqrt{3}\,V_\ell I_\ell\ \mathrm{[V\cdot A]}。θ\theta は相電圧と相電流の位相差
  • 同じ抵抗・同じ線間電圧では、Δ 結線の消費電力は Y 結線の3倍

電力の意味は有効電力・無効電力・皮相電力、Δ と Y の換算の一般式は Δ-Y 変換の記事で確かめましょう。

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デンケンラボ編集部

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