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電力発電所 / 水力発電10分で読めます

キャビテーションとは|原因・被害・防止策と吸出し管の役割を図解

電験三種の水力発電で問われるキャビテーションの発生の仕組み、被害、起こりやすい条件、防止策を整理し、吸出し管の役割と吸出し高さの考え方まで図解します。例題と解答で正誤問題のひっかけも確認できます。

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点検のために分解され台に置かれたフランシス水車のランナ。羽根の一部にキャビテーションによる蜂の巣状の侵食が見える写真
この記事の目次
  1. キャビテーションとは
  2. キャビテーションの被害
  3. キャビテーションの起こりやすい条件と防止策
  4. 吸出し管の役割と吸出し高さ
  5. ランナ出口の圧力を式で表す
  6. 例題で確かめる
  7. よくある質問
  8. キャビテーションと水撃作用は、どう違いますか。
  9. ペルトン水車に吸出し管はありますか。
  10. キャビテーションが起きても、発電は続けられますか。
  11. まとめ
図解でわかる 電験三種 電力 1 水力発電 の表紙この単元を1冊で読む図解でわかる 電験三種 電力 1
水力発電
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水車の種類と選び方 で、落差と比速度に合わせて水車を選ぶ見方を学びました。この記事では、その水車を傷める代表的な現象であるキャビテーションを扱います。キャビテーションとは、水の圧力が飽和蒸気圧以下に下がって水中に蒸気の泡ができ、その泡がつぶれるときの衝撃で羽根の表面が削られる現象です。防止の中心は、水車の下に付ける吸出し管と、水車を置く高さ(吸出し高さ)の決め方にあります。

キャビテーションの全体像
  • キャビテーションとは
    • 圧力が飽和蒸気圧以下になると泡ができ、つぶれて衝撃を出す
    • 水車のどこの話か(水の流れの断面)
  • キャビテーションの被害
    • 侵食、振動と騒音、効率の低下
  • 起こりやすい条件と防止策
    • 吸出し高さ大・比速度大・部分負荷で起こりやすい
    • 水車を低く据える、比速度を抑える、材質と仕上げを選ぶ
  • 吸出し管の役割と吸出し高さ
    • 落差の回収と流速の低下による圧力の回復
    • p2p_2 の式と、吸出し高さの上限
  • 例題で確かめる
    • 吸出し高さの上限、正誤問題、キャビテーション係数

キャビテーションとは

キャビテーションは、水が流れている最中に、局所的に圧力が下がって水が蒸気に変わる現象です。水は、圧力がその温度の飽和蒸気圧まで下がると蒸発します。やかんの湯が沸くのは温度を上げて蒸気圧を大気圧まで持ち上げるからで、キャビテーションは温度を変えずに圧力のほうを蒸気圧まで下げて水を蒸発させる、と言い換えられます。

圧力が下がる理由は、落差と流量とは で見たベルヌーイの定理です。水の流れでは、流速が速くなる場所ほど圧力が下がります。水車のランナの羽根のまわりは、流れが速くなって圧力が下がりやすい場所です。図1は、水の流れの断面の中で、この記事が扱う場所を示します。

放水口の水面 貯水池・水槽 水圧管路 ランナ 吸出し管 渦巻ケーシング この記事の範囲
図1 水の流れの断面。キャビテーションはランナのまわり、防止の鍵は吸出し管と据え付けの高さ

キャビテーションの発生から被害までは、次の 3 段階で進みます。

  1. 流速が速い場所で圧力が下がり、飽和蒸気圧以下になる
  2. その場所で水が蒸発し、蒸気の泡(空洞)ができる
  3. 泡が流れて圧力の高い場所へ出ると、一瞬でつぶれて衝撃が出る

図2は、羽根に沿って流れる水の圧力の変化です。圧力が蒸気圧を下回る区間で泡が生まれ、圧力が戻る区間でつぶれます。

圧力 飽和蒸気圧 泡が発生 圧力が蒸気圧以下 泡がつぶれる 衝撃で表面を削る 羽根に沿った水の流れの向き →
図2 羽根に沿った圧力の変化。蒸気圧を下回る区間で泡ができ、圧力が戻る区間でつぶれる

キャビテーションの被害

泡がつぶれるとき、泡の周りの水が中心に向かって一気に集まり、金属の表面に非常に大きな局所的な衝撃が加わります。1 回ごとの衝撃は小さくても、同じ場所に何度も繰り返されるので、金属の表面は少しずつ削れていきます。これを壊食(侵食)と呼びます。図3は、キャビテーションで荒れた羽根の表面です。

キャビテーションで羽根の表面が蜂の巣状に荒れた水車ランナを至近距離で撮った写真
  1. 侵食部 小さな穴が集まって蜂の巣状に荒れる
  2. 元の面 滑らかな金属面。侵食の前はここと同じ
  3. 羽根の縁 厚みのある縁
図3 キャビテーションで侵食されたランナ羽根の表面(写真はイメージ)

被害は、羽根の表面が削れるだけではありません。次の 4 つが代表的です。

被害何が起きるか
壊食(侵食)羽根や吸出し管の入口の表面が蜂の巣状に荒れ、穴が深くなる
振動・騒音泡が次々につぶれる衝撃が、水車全体の振動と騒音になる
効率・出力の低下羽根の形が崩れ、泡が流れをじゃまして、水車の効率と出力が下がる
補修の手間運転を止めて羽根を点検し、削れた部分を肉盛り溶接で埋めて研磨する

起こる場所は、圧力がいちばん下がるランナ羽根の出口側や、吸出し管の入口付近です。削れた部分は、図4のように、運転を止めて溶接で盛り直します。

水車ランナの羽根の侵食した部分に、手袋をした手で溶接トーチを持ち肉盛り溶接を行っている手元の写真
  1. 手袋の手 溶接トーチを握って作業する
  2. 溶接トーチ 先端から溶けた金属を盛る
  3. 肉盛り部 削れた分をビードで埋める
  4. 侵食部 まだ補修されていない荒れた縁
図4 侵食した羽根の肉盛り溶接による補修(写真はイメージ)

キャビテーションの起こりやすい条件と防止策

キャビテーションは「ランナ出口付近の圧力が蒸気圧に近づくほど」起こりやすくなります。その圧力を下げる条件と、それに対する防止策を表にまとめます。

起こりやすい条件なぜ起こりやすいか防止策
吸出し高さ HsH_s が大きいランナ出口の圧力が下がる(図5)水車を低く据え付けて HsH_s を小さくする(放水面より下に置くこともある)
比速度 NsN_s が大きい羽根まわりの相対速度が大きく、圧力の下がり方が大きい比速度を大きくしすぎない(回転速度を抑える)
部分負荷・過負荷(設計点から外れた流量)水が羽根に沿って流れず、局所的な低圧部ができる運転できる範囲を制限し、低負荷での連続運転を避ける
水温が高い・標高が高い水温が高いと蒸気圧が大きく、標高が高いと大気圧が小さい設計で見込む
羽根の表面が粗い・形が悪い流れが乱れて渦ができ、低圧部が生まれる表面を滑らかに仕上げ、羽根の形を改良する
材質が弱い衝撃で削られやすいステンレス鋼など、壊食に強い材料を使う

このうち、ここでは吸出し高さと比速度を詳しく見ます。吸出し高さ HsH_s は、放水面からランナ出口までの高さです。図5のように、HsH_s が大きいほどランナ出口の圧力が下がるので、キャビテーションが起こりやすくなります。

放水面 ランナ 吸出し管 吸出し高さ Hs 大気圧が水面を押す ランナ出口の圧力 p2 Hs が大きいほど下がる
図5 吸出し高さ。放水面からランナ出口までの高さ Hs が大きいほど、ランナ出口の圧力は下がる

図6は、水車を床下の低い位置に据え付けた発電所です。水車を低く置くのは、HsH_s を小さく(場合によっては負に)して、キャビテーションを防ぐためです。

床下の水車室に縦軸の水車が低く据え付けられている発電所の内部の写真。太い軸と円筒形のカバー、手すり、階段が見える
  1. 主軸 上の発電機へ回転を伝える軸
  2. 水車のカバー この内側にランナがある
  3. 階段 床下の水車室へ降りる
  4. ピットの壁 水車を床より低く据えている
図6 床より低い位置に据え付けられた縦軸の水車(写真はイメージ)

吸出し管の役割と吸出し高さ

吸出し管は、反動水車のランナ出口から放水路へつなぐ、下に向かって広がる管です(水車の種類と選び方 の構造部品)。役割は次の 2 つで、どちらも「ランナから出た水に残っているエネルギーを無駄にしない」ためのものです。

  1. 落差の回収: ランナを放水面より高い位置に置いても、吸出し管が水を放水面までつないでいるので、ランナ出口から放水面までの高さ(吸出し高さ)の分の落差も水車の仕事に使える
  2. 流速の低下による圧力の回復: 管を下に向かって広げ、流速を落とす。出口で捨てる運動エネルギーが減り、その分ランナ出口の圧力が下がって、水車が使える落差が増える

図7は、吸出し管の有無による違いです。管を広げることで流速が v2v_2 から v3v_3 に落ち、捨てる運動エネルギーが v32/2gv_3^2/2g だけになります。

吸出し管なし 吸出し管あり ランナ 出口の流速 v2 が速い 運動エネルギーを そのまま捨てる ランナ 管が広がり流速が v3 に低下 捨てる運動エネルギーが 小さくなる
図7 吸出し管の有無。管が広がって流速が v2 から v3 に落ち、出口で捨てるエネルギーが減る

図8は、点検のために水を抜いた吸出し管の内部です。ランナの出口から下へ向かって、管が大きく広がっているのが分かります。

点検のために水を抜いた吸出し管の内部の写真。上にランナの出口側、下に向かって広がる湿ったコンクリートの壁が見える
  1. ランナの出口 水はここから管へ出てくる
  2. 管の壁 下に向かって広がる
  3. 点検用照明 水を抜いて点検するときに使う
  4. 管の底 水を抜くと濡れた床が残る
図8 水を抜いた吸出し管の内部(写真はイメージ)

ランナ出口の圧力を式で表す

ランナ出口を点 2、吸出し管の出口(放水面)を点 3 として、ベルヌーイの定理を当てはめます。大気圧水頭を Ha [m]H_a\ \mathrm{[m]}、吸出し高さを Hs [m]H_s\ \mathrm{[m]}、点 2 と点 3 の流速を v2, v3 [m/s]v_2,\ v_3\ \mathrm{[m/s]} とすると、管内の損失を無視して、ランナ出口の圧力水頭 p2/ρgp_2/\rho g は次のとおりです。

p2ρg=Ha−Hs−v22−v322g\frac{p_2}{\rho g} = H_a - H_s - \frac{v_2^2 - v_3^2}{2g}

右辺の第 2 項は吸出し高さ、第 3 項は吸出し管が流速を落とした分です。HsH_s が大きいほど、また v2v_2 が大きいほど p2p_2 は小さくなります。この p2p_2 が飽和蒸気圧の水頭 HvH_v 以下になると、キャビテーションが起こります。つまり、キャビテーションを起こさない条件は次のとおりです。

p2ρg>Hv⇓Hs<Ha−Hv−v22−v322g\begin{gathered} \frac{p_2}{\rho g} > H_v \\ \Downarrow \\ H_s < H_a - H_v - \frac{v_2^2 - v_3^2}{2g} \end{gathered}

大気圧は約 101.3 [kPa]101.3\ \mathrm{[kPa]} で、水の高さに直すと約 10 [m]10\ \mathrm{[m]} です。20 [∘C]20\ \mathrm{[^\circ C]} の水の飽和蒸気圧は約 2.3 [kPa]2.3\ \mathrm{[kPa]}(約 0.24 [m]0.24\ \mathrm{[m]})で、水温が高いほど大きくなります。標高が高い場所では HaH_a が小さくなるので、HsH_s の上限も小さくなります。

例題で確かめる

例題1は、大気圧水頭 HaH_a を「蒸気圧の分」「流速の分」「吸出し高さ」の 3 つに配分する問題と見ると式を覚えやすくなります。図9は、例題1の数値での配分です。

大気圧水頭 Ha = 10.0 m 3.06 m 6.70 m 0.24 m 飽和蒸気圧の水頭 Hv 流速の分 吸出し高さの上限 Hs
図9 例題1の配分。大気圧水頭 10.0 m から、蒸気圧の分と流速の分を引いた残りが吸出し高さの上限
解答と解説を見る

吸出し管が流速を落とした分の水頭は、次のとおりです。

v22−v322g=82−222×9.8=6019.6≈3.06 [m]\frac{v_2^2 - v_3^2}{2g} = \frac{8^2 - 2^2}{2 \times 9.8} = \frac{60}{19.6} \approx 3.06\,\mathrm{[m]}

p2/ρg≥Hvp_2/\rho g \ge H_v となる条件から、上限は次のとおりです。

Hs≤Ha−Hv−v22−v322g=10.0−0.24−3.06≈6.7 [m]\begin{aligned} H_s &\le H_a - H_v - \frac{v_2^2 - v_3^2}{2g} \\ &= 10.0 - 0.24 - 3.06 \\ &\approx 6.7\,\mathrm{[m]} \end{aligned}

答え: 約 6.7 [m]6.7\ \mathrm{[m]}

解答と解説を見る

誤っているのは (4) です。部分負荷や過負荷では、水が羽根に沿って流れず局所的な低圧部ができるので、キャビテーションが起こりやすくなります。(1)(2)(3)(5) は正しい記述です。

答え: (4)

解答と解説を見る

σ=Ha−Hv−HsH≥σc\sigma = \dfrac{H_a - H_v - H_s}{H} \ge \sigma_c から、次のとおりです。

Hs≤Ha−Hv−σcH=10.0−0.3−0.10×60=3.7 [m]\begin{aligned} H_s &\le H_a - H_v - \sigma_c H \\ &= 10.0 - 0.3 - 0.10 \times 60 \\ &= 3.7\,\mathrm{[m]} \end{aligned}

答え: 3.7 [m]3.7\ \mathrm{[m]}。落差が大きいほど σcH\sigma_c H の項が大きくなり、吸出し高さの上限は小さくなります。

よくある質問

キャビテーションと水撃作用は、どう違いますか。

どちらも水の圧力が大きく変わる現象ですが、原因が違います。キャビテーションは、流れが速い場所で局所的に圧力が蒸気圧以下に下がって泡ができ、つぶれる現象です。水撃作用は、弁やガイドベーンを急に閉じたときなどに、管の中の水の流れが急に止められて圧力が急変する現象です(調速機と水撃作用とは で扱います)。

ペルトン水車に吸出し管はありますか。

ありません。ペルトン水車のランナは大気圧の空気中で回り、水は放水路へ自然に落ちるので、吸出し管は要りません。その代わり、ランナを放水面より高く置くと、その高さの分の落差は使えません。

キャビテーションが起きても、発電は続けられますか。

軽い間は続けられますが、羽根が削られ、効率と出力が下がり、振動と騒音も大きくなります。放っておくと羽根が傷むので、点検で侵食を見つけたら、運転を止めて肉盛り溶接などで補修し、運転する負荷の範囲を見直します。

思い出してみよう

答えを見る前に、まず自分で思い出してからタップしてください。

キャビテーションとは、どんな現象ですか?

局所の圧力が飽和蒸気圧以下に下がって水中に蒸気の泡ができ、その泡がつぶれる現象です。

キャビテーションで起こる被害を挙げてください。

羽根の壊食(侵食)、振動と騒音、効率と出力の低下です。

キャビテーションが起こりやすいのは、吸出し高さと比速度がどうなるときですか?

吸出し高さが大きいとき、比速度が大きいときです。部分負荷や過負荷でも起こりやすくなります。

キャビテーションを防ぐ方法を挙げてください。

水車を低く据えて吸出し高さを小さくする、比速度を大きくしすぎない、羽根を滑らかに仕上げる、ステンレス鋼など壊食に強い材料を使う、部分負荷運転を避ける、などです。

吸出し管の役割は何ですか?

ランナ出口から放水面までの落差を回収することと、管を広げて流速を落とし、出口で捨てる運動エネルギーを減らすことです。

ランナ出口の圧力水頭を表す式はどれですか?

p2ρg=Ha−Hs−v22−v322g\dfrac{p_2}{\rho g} = H_a - H_s - \dfrac{v_2^2 - v_3^2}{2g} です。これが HvH_v 以下になるとキャビテーションが起こります。

まとめ

  • キャビテーションは、圧力が飽和蒸気圧以下に下がって蒸気の泡ができ、泡がつぶれて羽根を削る現象。主に反動水車で問題になる
  • 被害は、壊食、振動・騒音、効率と出力の低下
  • 吸出し高さ HsH_s が大きい、比速度が大きい、部分負荷・過負荷のときに起こりやすい
  • 防止策は、水車を低く据える(HsH_s を小さく)、比速度を抑える、羽根の仕上げと材質を選ぶ、運転範囲を制限する
  • 吸出し管は、落差の回収と流速の低下による圧力の回復を担う。p2ρg=Ha−Hs−v22−v322g\dfrac{p_2}{\rho g} = H_a - H_s - \dfrac{v_2^2 - v_3^2}{2g}

次は、水車が回す相手である 水車発電機とは で、回転が電気に変わる仕組みを見ましょう。水車そのものの選び方は 水車の種類と選び方、出力の計算は 水力発電の出力の求め方 にまとめてあります。

図解でわかる 電験三種 電力 1 水力発電 の表紙この単元を1冊で通して読む図解でわかる 電験三種 電力 / 第1巻水力発電水の力と出力の式から水車・調速機・揚水発電までこの記事と同じ図解で、例題と練習問題まで1冊にまとめた Kindle 本です。Kindle Unlimited の対象なので、会員は追加料金なしで読めます。Amazon で見る

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デンケンラボ編集部

電験三種の合格プランをつくる問題集アプリ「デンケンラボ」の編集部です。試験センターの出題範囲に沿って、計算の考え方と覚えどころを図と式で解説しています。

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