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電力発電所 / 水力発電16分で読めます

落差と流量とは|水頭・ベルヌーイの定理・有効落差をやさしく図解

電験三種の水力発電で出力の土台になる落差と流量を解説します。位置・圧力・速度の水頭、ベルヌーイの定理と連続の式、総落差から損失水頭を引く有効落差、噴出速度 v=√(2gH) を写真と図と例題で確かめます。

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山あいのダムの堤体の上から、階段状の越流面を白く泡立ちながら流れ落ちる水と、奥に広がるダム湖を見た写真
この記事の目次
  1. 落差と流量とは
  2. 水頭:エネルギーを高さで表す
  3. ベルヌーイの定理と連続の式
  4. 総落差・損失水頭・有効落差
  5. ノズルの噴出速度 v=√(2gH)
  6. よくある質問
  7. 水頭とは何ですか。圧力や速さまで「高さ」で表すのはなぜですか。
  8. 総落差と有効落差は、問題ではどちらを使いますか。
  9. 流量が一定なのに、場所によって流速が変わるのはなぜですか。
  10. まとめ
図解でわかる 電験三種 電力 1 水力発電 の表紙この単元を1冊で読む図解でわかる 電験三種 電力 1
水力発電
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水力発電のしくみ で、水が電気に変わる流れを見ました。この記事では、その流れの中で水が持つ「力のもと」である落差と流量を調べます。落差は水面の高さの差、流量は毎秒通る水の体積で、水の持つエネルギーは「高さ」に換算した水頭で表し、ベルヌーイの定理で位置・圧力・速度の三つの水頭がつながります。実際に使える落差は、総落差から損失水頭を引いた有効落差です。これらを使った出力の式は、次の 水力発電の出力の求め方 で扱います。

落差と流量の全体像
  • 落差と流量とは
    • 落差は水面の高さの差、流量は毎秒通る水の体積
    • 水の力は落差と流量の二つで決まる
  • 水頭:エネルギーを高さで表す
    • 位置水頭 zz、圧力水頭 p/ρgp/\rho g、速度水頭 v2/2gv^2/2g
  • ベルヌーイの定理と連続の式
    • 三つの水頭の和は一定
    • 流量は Q=AvQ = Av、細い所ほど速い
  • 総落差・損失水頭・有効落差
    • 有効落差 H=H0−hH = H_0 - h
    • 圧力計の読みから全水頭を作り、出力までつなぐ
  • ノズルの噴出速度
    • v=2gHv = \sqrt{2gH}

落差と流量とは

水力発電で水が持つ力は、二つの量で決まります。一つは水がどれだけの高さを落ちるかという落差、もう一つは毎秒どれだけの水が流れるかという流量です。同じ水量でも高い所から落とすほど力は大きく、同じ高さでも多くの水を流すほど力は大きくなります。

図1は、水力発電のしくみ の図1と同じ設備の並びを、水槽から放水口までに絞って描いたものです。水槽の水面と放水面の高さの差が総落差、水圧管路を毎秒流れる水の体積が流量です。

総落差 H0 水槽 水槽の水面 流量 Q 毎秒流れる水の体積 水圧管路 水車・発電所 放水口 放水面 この記事は、この断面の「落差」と「流量」の話
図1 水槽から放水口までの断面。総落差 H0 は二つの水面の高さの差、流量 Q は水圧管路を毎秒流れる水の体積

この記事で使う量を、先に表にまとめます。

量記号単位意味
総落差H0H_0[m]\mathrm{[m]}取水側の水面と放水面の高さの差
損失水頭hh[m]\mathrm{[m]}水路や管の摩擦などで失う高さ
有効落差HH[m]\mathrm{[m]}実際に水車で使える落差。H=H0−hH = H_0 - h
流量QQ[m3/s]\mathrm{[m^3/s]}毎秒、断面を通る水の体積
流速vv[m/s]\mathrm{[m/s]}水の流れる速さ
断面積AA[m2]\mathrm{[m^2]}水が通る管の断面の面積

落差の上端は、取水側の水面の高さです。ダム式の発電所では、この水面はダム湖の水位で、図2のような量水標(水位を目盛りで読む板)で測ります。雨の多い時期と少ない時期で水位が変われば、落差も変わります。

ダム湖の岸のコンクリート護岸に立つ、赤と黒の目盛りのある量水標と、静かな湖面の写真
  1. 量水標 水位を目盛りで読む板
  2. 水面 目盛りと水面が交わる所が水位
  3. 護岸 コンクリートの岸。水位の変化を読みやすくする
  4. 湖面 広いので、水の流れはほぼ静止とみなせる
図2 ダム湖の量水標。水面の高さが落差の上端になる(写真はイメージ)

湖面が広くて水がほとんど動いていないことは、あとでベルヌーイの定理を使うときに効いてきます。

水頭:エネルギーを高さで表す

水のエネルギーは、位置・圧力・速度の三つの形で現れます。電験三種では、この三つをどれも「水の高さ [m]\mathrm{[m]}」に換算して比べます。これが水頭です。重さ 1 N の水が持つエネルギーを、同じエネルギーを持つ水柱の高さで表したものと考えてください。

水頭式意味
位置水頭zz基準面からの高さそのもの
圧力水頭pρg\dfrac{p}{\rho g}圧力 p [Pa]p\ \mathrm{[Pa]} を、同じ圧力を生む水柱の高さにしたもの
速度水頭v22g\dfrac{v^2}{2g}流速 vv で動く水が、真上へ吹き上がれる高さ

ここで ρ\rho は水の密度 1000 [kg/m3]1000\ \mathrm{[kg/m^3]}、gg は重力加速度 9.8 [m/s2]9.8\ \mathrm{[m/s^2]} です。ρg=9800\rho g = 9800 なので、圧力水頭は p/9800 [m]p/9800\ \mathrm{[m]} となり、水頭 1 m は圧力 9.8 [kPa]9.8\ \mathrm{[kPa]} に当たります。速度水頭は、質量 mm の水の運動エネルギー 12mv2\frac{1}{2}mv^2 を重さ mgmg で割ると v2/2gv^2/2g になることから出ます。

三つの水頭の和を全水頭といいます。図3は、水槽の水面と水圧管路の下端で、全水頭の中身がどう入れ替わるかを棒で比べたものです。

全水頭は同じ高さ(損失がないとき) z 位置水頭 水槽の水面 z p / ρg v2 / 2g 位置水頭 圧力水頭 速度水頭 水圧管路の下端 高さは水頭 [m]。棒の高さは模式的
図3 全水頭の入れ替わり。水面では全部が位置水頭、管の下端では位置水頭が圧力水頭と速度水頭に変わる

水面では水は静止していて圧力は大気圧(ゲージ圧 0)なので、全水頭はすべて位置水頭です。水が管を下ると高さを失い、その分が圧力水頭と速度水頭に移ります。水圧管路の水が「水車へ運ぶ力」は、この圧力と速さの形で届きます。

発電所の建屋の床に据えた太い鋼管と入口弁、管の側面に付けた丸い圧力計の写真
  1. 圧力計 管の中の水の圧力を読む。圧力水頭に換算できる
  2. 水圧管 水槽から下りてきた水が通る太い鋼管
  3. 入口弁 水車の手前で水を止めたり通したりする弁
  4. 操作ハンドル 弁を開閉する
図4 発電所内の水圧管と入口弁。圧力計の読みが圧力水頭になる(写真はイメージ)

ベルヌーイの定理と連続の式

摩擦のない水が定常に流れるとき、同じ流れの上のどの点でも全水頭は変わりません。これがベルヌーイの定理です。流れの上の 2 点を 1、2 とすると、次のように書けます。

z1+p1ρg+v122g=z2+p2ρg+v222g=一定z_1 + \frac{p_1}{\rho g} + \frac{v_1^2}{2g} = z_2 + \frac{p_2}{\rho g} + \frac{v_2^2}{2g} = \text{一定}

両辺に ρg\rho g を掛けると ρgz+p+12ρv2=一定\rho g z + p + \frac{1}{2}\rho v^2 = \text{一定} の形になります。こちらは「圧力の単位(Pa)で書いたベルヌーイの式」で、どちらも同じ内容です。3 つの項はそれぞれ、水 1 [m3]1\ \mathrm{[m^3]} あたりのエネルギー [J/m3]\mathrm{[J/m^3]} にも読めます。ρgz\rho g z は位置、pp は圧力、12ρv2\frac{1}{2}\rho v^2 は運動のエネルギーで、単位はどれも Pa=J/m3\mathrm{Pa} = \mathrm{J/m^3} です。ただし、この式が成り立つのは、摩擦などの損失がなく、水の密度が変わらず、流れが時間で変わらない場合です。損失があるときは、下流側の全水頭が損失水頭の分だけ小さくなります(次の章)。

流速は、流量と管の断面積から決まります。管の中を水があふれも途切れもせずに流れるなら、どの断面でも毎秒通る水の体積は同じです。これが連続の式です。

Q=A1v1=A2v2 [m3/s]Q = A_1 v_1 = A_2 v_2\ \mathrm{[m^3/s]}

図5のように、管が細くなると流速は大きくなります。管の内径が半分になれば断面積は 1/41/4 になるので、流速は 4 倍です。

太い側 A1 大、v1 小 細い側 A2 小、v2 大 Q = A1v1 = A2v2(一定)
図5 連続の式。流量が同じなら、断面積が小さい所ほど流速が大きい(矢印の長さは速さの目安)

水力発電所では、水槽のように広い所で流れがゆっくりしていて、水圧管路に入ると管が細いぶん流速が上がります。図6の水槽の水面はほとんど動いておらず、水圧管路の入口で水が管へ吸い込まれて速くなります。

山腹のコンクリートの水槽に水がたまり、その下端の格子の奥から太い鋼製の水圧管路が斜面を下っていく写真
  1. 水槽の水面 広いので、流れはほぼ静止している
  2. 格子 ごみが管に入るのを防ぐ
  3. 水圧管路の入口 ここから管へ水が流れ込み、流速が上がる
  4. 斜面を下る管 落ちるほど圧力が高くなる
図6 水槽と水圧管路の入口。広い水面から細い管へ入ると、流速が上がる(写真はイメージ)
解答と解説を見る

(1) 断面積は A1=π×(2.0/2)2=3.14 [m2]A_1 = \pi \times (2.0/2)^2 = 3.14\ \mathrm{[m^2]} です。連続の式 Q=AvQ = Av から、

v1=QA1=123.14≈3.82 [m/s]v_1 = \frac{Q}{A_1} = \frac{12}{3.14} \approx 3.82\ \mathrm{[m/s]}

(2) 断面積は A2=π×(1.0/2)2=0.785 [m2]A_2 = \pi \times (1.0/2)^2 = 0.785\ \mathrm{[m^2]} です。

v2=QA2=120.785≈15.3 [m/s]v_2 = \frac{Q}{A_2} = \frac{12}{0.785} \approx 15.3\ \mathrm{[m/s]}

内径が半分になると断面積は 1/41/4 になるので、流速はちょうど 4 倍の約 15.3 [m/s]15.3\ \mathrm{[m/s]} です。

総落差・損失水頭・有効落差

水槽の水面から放水面までの高さの差が総落差 H0H_0 です。ところが、水が水路や水圧管路を流れるときは、管の壁との摩擦や曲がり、弁などで、全水頭の一部が失われます。失われた分を高さで表したものが損失水頭 hh です。実際に水車へ届く落差は、総落差から損失水頭を引いた有効落差 HH になります。

H=H0−hH = H_0 - h

図7は、水槽の水面を出発点にして、全水頭が水圧管路を進むうちに少しずつ下がるようすです。ベルヌーイの定理の右辺に損失水頭 hh を足したものが、この図の傾いた線です。

総落差 H0 水槽の水面 水車入口 摩擦などで少しずつ下がる 損失水頭 h 有効落差 H 水車で使える 放水面(高さの基準) H = H0 − h
図7 全水頭の線。水圧管路を進むうちに損失水頭 h の分だけ下がり、残りが有効落差 H になる(高さは模式的)

落差の下端は、放水口の水面(放水面)の高さです。水車を出た水は放水路を通って川へ戻るので、図8のように放水面が川の水面とつながります。反動水車では、水車の出口に付く吸出し管がこの放水面までの落差を回収します。

山あいの水力発電所の建屋の足元にある放水口から、水が川へ流れ出し、下流へ続いている写真
  1. 発電所の建屋 中で水車が回っている
  2. 放水口 水車を出た水が川へ出ていく出口
  3. 下流の流れ 水は川へ戻り、下流で再び使われる
  4. 川面 この水面の高さが、落差の下端(放水面)
図8 放水口と川。放水面が落差の下端になる(写真はイメージ)

水槽の水面から水車入口までのベルヌーイの式で、実際に水圧計の読みを確かめてみます。

解答と解説を見る

水車入口を高さの基準 z=0z = 0 にとると、水槽の水面の全水頭は 150 [m]150\ \mathrm{[m]} です。損失水頭 3.0 [m]3.0\ \mathrm{[m]} を引いたものが水車入口の全水頭なので、

0+pρg+5.022×9.8=150−3.00 + \frac{p}{\rho g} + \frac{5.0^2}{2 \times 9.8} = 150 - 3.0

速度水頭は 2519.6≈1.28 [m]\dfrac{25}{19.6} \approx 1.28\ \mathrm{[m]} です。したがって圧力水頭は、

pρg=150−3.0−1.28≈145.7 [m]\frac{p}{\rho g} = 150 - 3.0 - 1.28 \approx 145.7\ \mathrm{[m]}

圧力は、

p=ρg×145.7=9800×145.7≈1.43×106 [Pa]=1.43 [MPa]\begin{aligned} p &= \rho g \times 145.7 = 9800 \times 145.7 \\ &\approx 1.43 \times 10^{6}\ \mathrm{[Pa]} = 1.43\ \mathrm{[MPa]} \end{aligned}

水頭 1 [m]1\ \mathrm{[m]} が 9.8 [kPa]9.8\ \mathrm{[kPa]} なので、145.7×9.8 [kPa]≈1.43 [MPa]145.7 \times 9.8\ \mathrm{[kPa]} \approx 1.43\ \mathrm{[MPa]} と求めても同じです。

圧力計の読みから、水車入口の全水頭を作り、出力まで進める問題もあります。全水頭を、放水面を基準にした高さで測ると、それが水車に届く有効落差になります。

解答と解説を見る

(1) 断面積は A=3.14×(2.0/2)2=3.14 [m2]A = 3.14 \times (2.0/2)^2 = 3.14\ \mathrm{[m^2]} です。v=Q/A=15.7/3.14=5.0 [m/s]v = Q/A = 15.7/3.14 = 5.0\ \mathrm{[m/s]}。

(2) 三つの水頭を求めます。

  • 位置水頭 z=3.0 [m]z = 3.0\ \mathrm{[m]}
  • 圧力水頭 pρg=1.47×1069800=150 [m]\dfrac{p}{\rho g} = \dfrac{1.47 \times 10^6}{9800} = 150\ \mathrm{[m]}
  • 速度水頭 v22g=5.022×9.8≈1.28 [m]\dfrac{v^2}{2g} = \dfrac{5.0^2}{2 \times 9.8} \approx 1.28\ \mathrm{[m]}

全水頭は、この 3 つの和で 3.0+150+1.28≈154.3 [m]3.0 + 150 + 1.28 \approx 154.3\ \mathrm{[m]} です。これが有効落差 HH になります。

(3) P=9.8QHη=9.8×15.7×154.3×0.90≈2.14×104 [kW]P = 9.8QH\eta = 9.8 \times 15.7 \times 154.3 \times 0.90 \approx 2.14 \times 10^{4}\ \mathrm{[kW]}、つまり約 21 400 [kW]21\,400\ \mathrm{[kW]} です。

圧力計の読みだけを使って 150 [m]150\ \mathrm{[m]} とするのは誤りです。位置水頭と速度水頭を足し忘れないでください。

高さが違い、管の太さも違う 2 つの断面の圧力を比べる型もあります。連続の式で流速を出してから、ベルヌーイの式に入れます。

解答と解説を見る

断面積は AA=3.14 [m2]A_\mathrm{A} = 3.14\ \mathrm{[m^2]}、AB=3.14×0.52=0.785 [m2]A_\mathrm{B} = 3.14 \times 0.5^2 = 0.785\ \mathrm{[m^2]} です。流速は、

vA=6.283.14=2.0 [m/s]vB=6.280.785=8.0 [m/s]\begin{aligned} v_\mathrm{A} &= \frac{6.28}{3.14} = 2.0\ \mathrm{[m/s]} \\ v_\mathrm{B} &= \frac{6.28}{0.785} = 8.0\ \mathrm{[m/s]} \end{aligned}

圧力の単位で書いたベルヌーイの式 pA+ρgzA+12ρvA2=pB+ρgzB+12ρvB2p_\mathrm{A} + \rho g z_\mathrm{A} + \frac{1}{2}\rho v_\mathrm{A}^2 = p_\mathrm{B} + \rho g z_\mathrm{B} + \frac{1}{2}\rho v_\mathrm{B}^2 から、zA−zB=30 [m]z_\mathrm{A} - z_\mathrm{B} = 30\ \mathrm{[m]} として、

pB=pA+ρg×30+12ρ (vA2−vB2)=0.80×106+294 000+12×1000×(4−64)=0.80×106+294 000−30 000≈1.06×106 [Pa]\begin{aligned} p_\mathrm{B} &= p_\mathrm{A} + \rho g \times 30 \\ &\quad + \tfrac{1}{2}\rho\,(v_\mathrm{A}^2 - v_\mathrm{B}^2) \\ &= 0.80 \times 10^6 + 294\,000 \\ &\quad + \tfrac{1}{2} \times 1000 \times (4 - 64) \\ &= 0.80 \times 10^6 + 294\,000 - 30\,000 \\ &\approx 1.06 \times 10^6\ \mathrm{[Pa]} \end{aligned}

答えは約 1.06 [MPa]1.06\ \mathrm{[MPa]} です。低い所へ下ると圧力は上がり(+0.294 [MPa]+0.294\ \mathrm{[MPa]})、細くなって速くなると圧力は下がります(−0.030 [MPa]-0.030\ \mathrm{[MPa]})。

ノズルの噴出速度 v=√(2gH)

ベルヌーイの定理の応用で、電験三種で問われるのが、ノズルから噴き出す水の速さです。水槽の水面から H [m]H\ \mathrm{[m]} 低い所にあるノズルから水が大気中へ出るとき、水面では速度 0・大気圧、ノズル出口では大気圧なので、圧力水頭は両方 0 です。残るのは位置水頭の減少と速度水頭の増加で、

H=v22g⟹v=2gH [m/s]H = \frac{v^2}{2g}\qquad\Longrightarrow\qquad v = \sqrt{2gH}\ \mathrm{[m/s]}

となります。図9のように、落差 HH の位置水頭が、すべて速度水頭に変わったということです。

水槽 水面(v = 0) ノズル H 落差 噴出速度 v v = √(2gH) (H = v2 / 2g)
図9 ノズルの噴出速度。落差 H の位置水頭が、すべて速度水頭 v²/2g に変わる

ノズルは、ペルトン水車で水の圧力を速さに変える部品として使われます。水車の種類と構造は 水力発電のしくみ の図3にあり、詳しい違いはシリーズの先の記事で扱います。ここでは、ノズルの噴出速度が落差だけで決まる、という点を押さえてください。実際の水は摩擦で少し遅くなりますが、試験では損失のない理想の式を使います。

噴流の断面積 AA がわかれば、連続の式 Q=AvQ = Av で、そのノズルを通る流量も求まります。

解答と解説を見る

(1) v=2gHv = \sqrt{2gH} に代入します。

v=2×9.8×160=3136=56 [m/s]\begin{aligned} v &= \sqrt{2 \times 9.8 \times 160} \\ &= \sqrt{3136} \\ &= 56\ \mathrm{[m/s]} \end{aligned}

(2) ノズルの断面積は A=π×(0.10/2)2=3.14×0.0025=7.85×10−3 [m2]A = \pi \times (0.10/2)^2 = 3.14 \times 0.0025 = 7.85 \times 10^{-3}\ \mathrm{[m^2]} です。連続の式から、

Q=Av=7.85×10−3×56≈0.44 [m3/s]\begin{aligned} Q &= Av = 7.85 \times 10^{-3} \times 56 \\ &\approx 0.44\ \mathrm{[m^3/s]} \end{aligned}

噴出速度は落差だけで決まり、流量はそこに断面積が掛かるので、同じ落差でもノズルを太くすれば流量が増えます。

よくある質問

水頭とは何ですか。圧力や速さまで「高さ」で表すのはなぜですか。

水が持つエネルギーを、位置・圧力・速度の三つの形で足し合わせて比べるためです。どれも「同じエネルギーを持つ水柱の高さ」に直すと、単位が [m]\mathrm{[m]} にそろい、ベルヌーイの定理で単純に足し引きできます。圧力水頭は p/ρgp/\rho g、速度水頭は v2/2gv^2/2g です。

総落差と有効落差は、問題ではどちらを使いますか。

水車で使える力を求めるときは有効落差を使います。問題文に総落差と損失水頭が出ていれば H=H0−hH = H_0 - h で有効落差を先に求め、「有効落差」と書いてあれば、損失水頭は引き済みなので、もう引きません。出力の計算での使い方は 水力発電の出力の求め方 で確かめられます。

流量が一定なのに、場所によって流速が変わるのはなぜですか。

どの断面でも毎秒通る水の体積は同じなので、断面積が小さい所ほど流速が大きくなるからです。Q=AvQ = Av で、QQ が一定なら vv は AA に反比例します。水槽の広い水面でほとんど止まっている水が、水圧管路に入ると速く流れるのはこのためです。

思い出してみよう

答えを見る前に、まず自分で思い出してからタップしてください。

水頭とは何ですか。単位は何ですか?

水が持つエネルギーを、同じエネルギーを持つ水柱の高さで表したものです。単位は [m]\mathrm{[m]} です。

三つの水頭の式を言えますか?

位置水頭は zz、圧力水頭は p/ρgp/\rho g、速度水頭は v2/2gv^2/2g です。三つの和が全水頭です。

ベルヌーイの定理は何を言っていますか? 成り立つ条件は?

同じ流れの上では全水頭が一定になる、という定理です。摩擦などの損失がなく、定常で、密度が変わらない場合に成り立ちます。

連続の式を書いて、細い管での流速の変化を説明してください。

Q=A1v1=A2v2Q = A_1 v_1 = A_2 v_2 です。流量が同じなら、断面積が小さい所ほど流速が大きくなります。

有効落差は、総落差からどう求めますか?

H=H0−hH = H_0 - h です。総落差から損失水頭を引きます。水頭 1 [m]1\ \mathrm{[m]} は圧力 9.8 [kPa]9.8\ \mathrm{[kPa]} に当たります。

有効落差 160 [m]160\ \mathrm{[m]} のノズルの噴出速度は?

v=2gH=2×9.8×160=56 [m/s]v = \sqrt{2gH} = \sqrt{2 \times 9.8 \times 160} = 56\ \mathrm{[m/s]} です。

まとめ

  • 水力発電の水の力は、落差 [m]\mathrm{[m]} と流量 Q [m3/s]Q\ \mathrm{[m^3/s]} の二つで決まる
  • 水頭は、エネルギーを水の高さで表したもの。位置水頭 zz、圧力水頭 p/ρgp/\rho g、速度水頭 v2/2gv^2/2g の和が全水頭
  • ベルヌーイの定理は、損失のない流れで全水頭が一定になること。連続の式は Q=AvQ = Av で、細い所ほど流速が大きい
  • 実際に使える落差は有効落差 H=H0−hH = H_0 - h。総落差から損失水頭を引く
  • 圧力計の読みは、位置水頭・圧力水頭・速度水頭の和にして有効落差にし、P=9.8QHηP = 9.8QH\eta へつなぐ
  • ノズルの噴出速度は v=2gHv = \sqrt{2gH}。位置水頭がすべて速度水頭に変わったもの
求めるもの式
全水頭z+pρg+v22gz + \dfrac{p}{\rho g} + \dfrac{v^2}{2g}
連続の式Q=A1v1=A2v2Q = A_1 v_1 = A_2 v_2
有効落差H=H0−hH = H_0 - h
噴出速度v=2gHv = \sqrt{2gH}

水の持つ力のもとがわかったので、次は 水力発電の出力の求め方 で、流量と有効落差から P=9.8QHηP = 9.8QH\eta で何 kW になるかを計算しましょう。全体の流れをもう一度確かめたいときは 水力発電のしくみ に戻れます。

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