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電力発電所 / 水力発電18分で読めます

水力発電の計算問題 型別演習②|調整池・流況曲線・揚水を7つの型で解く

電験三種の水力発電で出る調整池・流況曲線・揚水の計算問題を、7つの型に分けて演習します。出題の形、解く手順、オリジナルの例題と解答、ひっかけまでを図解で確認でき、故障原因を推定する問題も扱います。

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夕暮れの山あいで、尾根の上池の堤から水圧管路が斜面を下り、谷の下池のほとりにある発電所の建物に明かりがともる揚水発電所の遠景写真
この記事の目次
  1. 水力発電の計算問題の「型」とは
  2. 調整池の1日調整と多段運転
  3. 型1 調整池の1日調整
  4. 型2 多段運転
  5. 流況曲線の読み取りと調整池の容量
  6. 型3 流況曲線から確保流量を読む
  7. 一次式で与えられた流況曲線
  8. 型4 式で与えられた流況曲線の日数と電力量
  9. 揚水の出力・入力・所要時間・変換効率
  10. 型5 揚水の出力と入力
  11. 型6 揚水の所要時間と変換効率
  12. 型7 電動機入力からの逆算
  13. 故障原因を症状から推定する型
  14. よくある質問
  15. 揚水の計算で、効率は掛けるのですか、割るのですか?
  16. 調整池の容量は、運転時間と休止時間のどちらで計算しますか?
  17. 選択肢の値と少しずれたときは、どうしますか?
  18. まとめ
図解でわかる 電験三種 電力 1 水力発電 の表紙この単元を1冊で読む図解でわかる 電験三種 電力 1
水力発電
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水力発電の計算問題 型別演習① では、出力・流量・比速度の型を解きました。この記事は演習の後半で、調整池、流況曲線、揚水という「水の量を時間で足し引きする」計算を、過去問の型に沿って7つに分けて解きます。どの型も、手順は決まっています。合図の言葉から型を決め、式に当てはめて、最後に検算するだけです。

型別演習②の全体像
  • 計算問題の「型」とは
    • 7つの型と、見分ける合図の言葉
  • 調整池の1日調整と多段運転
    • 流入量 ×\times 24 時間を、運転する時間に集中させる
    • 時間帯ごとに貯水量を足し引きして、最大値が容量
  • 流況曲線の読み取りと調整池の容量
    • 355 日・200 日の流量を図から読む
  • 一次式で与えられた流況曲線
    • 溢水日数は式から、電力量は面積から出す
  • 揚水の出力・入力・所要時間・変換効率
    • 発電は引いて掛け、揚水は足して割る
    • 水量の収支で時間を決め、電力量の比で効率を出す
  • 故障原因を症状から推定する型
    • 水槽の水位と入口の圧力計で、詰まった場所を絞る

水力発電の計算問題の「型」とは

水力発電の計算問題は、問題ごとに数字は違いますが、組み立ては何通りかに決まっています。この「組み立て」が型です。型が分かれば、問題文を読んで最初にやることが決まり、計算が迷わなくなります。

この記事で扱う7つの型を、図1にまとめます。右の欄が、問題文に出てくる合図の言葉です。

問題文の合図で、7つの型のどれかを決める 1 調整池の1日調整 流入は一定で、数時間に集中して発電 2 多段運転 休止・中負荷・ピークと時間帯が複数 3 流況曲線の読み取り 図から 355 日・200 日の流量を読む 4 一次式の流況曲線 式で与えられた曲線の日数と面積 5 揚水の出力・入力 損失水頭が総落差の何 % かで与えられる 6 所要時間と変換効率 揚水する水量と発電に使う水量が違う 7 電動機入力からの逆算 入力と揚程から流量、水量から電力量
図1 7つの型と、見分けるための合図。合図が決まれば、使う式も決まる

どの型も、水の量を扱います。調整池の型は「流入した量とためた量」、流況曲線の型は「流量の面積」、揚水の型は「上げた水と落とした水」です。つまり、水の量は必ず収支が合うことを使います。計算の途中で量が合わなくなったら、どこかで単位か時間を取り違えています。

なお、各型の説明では、過去問で同じ型が出た年度を添えます。数値と文章はすべてオリジナルで、答えは python で検算してあります。解説記事での基本は 流況曲線とは と 揚水発電とは にあり、出力の式は 水力発電の出力の求め方 にあります。

調整池の1日調整と多段運転

型1 調整池の1日調整

出題の形 調整池式発電所で、川の流量は1日を通じて一定。この水を貯めておき、1日のうちの数時間だけ集中して発電する。そのときの使用水量、必要な貯水量、出力を求める。令和7年度上期の電力で出た型です。

調整池は、水を貯めておいて、電気が必要な時間に集中して使うための池です。図2は、川をせき止めて水を貯める取水堰と池の例です。

山あいの川をせき止めた堰の上流側に水面が広がり、堰の脇に取水口のゲートと水路が続く写真
  1. 池の水面 休止中は水が貯まって上がり、運転中は使って下がる
  2. 堰 川の水をせき止めて、池の水位を保つ
  3. 取水口ゲート 発電に回す水量を開閉で調節する
  4. 導水路 取り入れた水を、発電所へ送る
図2 堰と調整池。池の水位が、1日の水量の貯めと使いを受け持つ(写真はイメージ)

解く手順

  1. 1日に流入する水の量を求める。流入量 ×\times 24 時間
  2. 運転中は、その全量を運転時間で使い切る。使用水量 Q=Q流入×24÷tQ = Q_{\text{流入}} \times 24 \div t
  3. 貯水量は、停止している時間の流入量。V=Q流入×(24−t)×3600V = Q_{\text{流入}} \times (24 - t) \times 3600
  4. 出力は、使用水量 QQ を使って P=9.8QHηP = 9.8QH\eta
解答と解説を見る

(1) 1日の流入量 9×249 \times 24 を、5 時間で使い切るので、

Q=9×245=43.2 [m3/s]Q = \frac{9 \times 24}{5} = 43.2\ \mathrm{[m^3/s]}

(2) 水車を止めている 19 時間の流入が、池に貯まります。

V=9×19×3600=615 600 [m3]V = 9 \times 19 \times 3600 = 615\,600\ \mathrm{[m^3]}

運転中も 9 [m3/s]9\ \mathrm{[m^3/s]} は流れ込み続けるので、池から出る分は (43.2−9)×5×3600=615 600 [m3](43.2 - 9) \times 5 \times 3600 = 615\,600\ \mathrm{[m^3]} で、貯めた量と一致します。

(3) 出力は、

P=9.8×43.2×120×0.88×0.96≈4.29×104 [kW]\begin{aligned} P &= 9.8 \times 43.2 \times 120 \times 0.88 \times 0.96 \\ &\approx 4.29 \times 10^{4}\ \mathrm{[kW]} \end{aligned}

答え:(1) 43.2 m3/s43.2\ \mathrm{m^3/s}、(2) 615 600 m3615\,600\ \mathrm{m^3}、(3) 約 4.29×104 kW4.29 \times 10^{4}\ \mathrm{kW}(約 43 MW)。

ひっかけ 池の容量を Q×tQ \times t にしてしまうこと。運転中も川の水は流れ込み続けるので、池から出る分は (Q−Q流入)×t(Q - Q_{\text{流入}}) \times t です。これは、止めている間に貯めた量と同じ値になるので、検算に使えます。時間を秒にする ×3600\times 3600 の掛け忘れも、よくある誤りです。

型2 多段運転

出題の形 流入は一定で、1日が「休止・中負荷・休止・ピーク」のように複数の時間帯に分かれる。池の水は、1日の終わりにちょうど使い切る。ピーク時の使用水量と出力、必要な貯水量を求める。令和4年度上期の法規で出た型です。

型1との違いは、時間帯が複数に分かれることだけです。やることは同じで、時間帯ごとに貯水量を足し引きします。流入より多く使う時間帯は貯水量が減り、使わない時間帯は増えます。

解く手順

  1. 時間帯の表を書く。各時間帯の「使用水量」と「時間」
  2. 時間帯ごとに、貯水量の変化 (Q流入−Q使用)×t×3600(Q_{\text{流入}} - Q_{\text{使用}}) \times t \times 3600 を求める
  3. 1日の終わりに池が空になる条件から、ピーク時の使用水量を決める
  4. 貯水量の最大値が、池に必要な有効貯水量になる
解答と解説を見る

時間帯ごとに、貯水量の変化 (15−Q使用)×t×3600 [m3](15 - Q_{\text{使用}}) \times t \times 3600\ \mathrm{[m^3]} を足し引きします。表の時間帯のかっこ内は使用水量 [m3/s]\mathrm{[m^3/s]} です。たとえば 0 〜 9 時は 15×9×3600=486 00015 \times 9 \times 3600 = 486\,000 です。

時間帯増減終わりの貯水量
0 〜 9 時(0)+486 000+486\,000486 000486\,000
9 〜 13 時(21)−86 400-86\,400399 600399\,600
13 〜 16 時(0)+162 000+162\,000561 600561\,600
16 〜 24 時(QpQ_p)(15−Qp)×28 800(15 - Q_p) \times 28\,80000

(1) 16 時の貯水量 561 600561\,600 を、8 時間で使い切るので、

(Qp−15)×8×3600=561 600Qp=15+561 60028 800=34.5 [m3/s]\begin{aligned} (Q_p - 15) \times 8 \times 3600 &= 561\,600 \\ Q_p &= 15 + \frac{561\,600}{28\,800} \\ &= 34.5\ \mathrm{[m^3/s]} \end{aligned}

検算:1日に使う水は 21×4+34.5×8=36021 \times 4 + 34.5 \times 8 = 360、流入は 15×24=36015 \times 24 = 360 で一致します。

(2) 貯水量が最大になるのは 16 時で、561 600 [m3]561\,600\ \mathrm{[m^3]} です。図3のように、最初の休止(9 時)の 486 000486\,000 が最大ではありません。

(3) ピーク運転の出力は、

P=9.8×34.5×75×0.88×0.96≈2.14×104 [kW]\begin{aligned} P &= 9.8 \times 34.5 \times 75 \times 0.88 \times 0.96 \\ &\approx 2.14 \times 10^{4}\ \mathrm{[kW]} \end{aligned}

答え:(1) 34.5 m3/s34.5\ \mathrm{m^3/s}、(2) 561 600 m3561\,600\ \mathrm{m^3}、(3) 約 2.14×104 kW2.14 \times 10^{4}\ \mathrm{kW}。

0 200 400 600 貯水量 [千 m³] 0 9 13 16 24 時 最大 561,600 m³ 休止(貯水) 21 m³/s 休止 ピーク運転
図3 例題2の貯水量の変化。増える時間帯と減る時間帯を足し引きすると、最大値が池の容量になる

ひっかけ 有効貯水量は、池が最も満ちたときの量です。最初の休止の終わりと、最大の時刻が一致するとは限りません。例題2では、中負荷運転で一度減った後、再び休止で貯めて 16 時に最大になります。時間帯の表を書いて、各行の終わりの貯水量を確かめれば、取り違えません。

流況曲線の読み取りと調整池の容量

型3 流況曲線から確保流量を読む

出題の形 流況曲線の図が付く。図から渇水量(355 日)や 200 日の流量を読み取り、それを基準に最大使用水量と調整池の容量を求める。令和7年度上期の電力で出た型です。

流況曲線は、日流量を大きい順に並べた曲線です。何日目の流量かで読むので、読み取る位置を間違えないことが大切です。図4は、流量を観測する川の施設の例です。

川岸の石積み護岸に建つ水位計の小屋と、川の中に立つ量水標の写真
  1. 水位計の小屋 水位を自動で記録する計器が入っている
  2. 量水標 水位を目盛りで読む標尺
  3. 護岸 流れる位置を安定させる、川岸の石積み
  4. 川の流れ この流量を毎日記録して並べ替えると流況曲線になる
図4 流量の観測所。ここで毎日の水位と流量を測って、流況曲線をつくる(写真はイメージ)

解く手順

  1. 図の横軸の日数から、問題が指定する日数の流量を読む(渇水量は 355 日)
  2. 最大使用水量を決める。渇水量を毎日貯めて tt 時間で使う場合は Qmax⁡=Q渇水×24÷tQ_{\max} = Q_{\text{渇水}} \times 24 \div t
  3. 容量は V=(Qmax⁡−Q確保)×t×3600V = (Q_{\max} - Q_{\text{確保}}) \times t \times 3600。確保する流量は、問題が指定した日数の値
0 10 20 30 40 流量 [m³/s] 0 100 200 300 365 日数 [日] 最大使用水量 18(例題3の答え) 渇水量 6 200日値 12
図5 例題3の流況曲線。線の上の2点を読み、横の破線が最大使用水量
解答と解説を見る

図5から、渇水量は 6 [m3/s]6\ \mathrm{[m^3/s]}、200 日値は 12 [m3/s]12\ \mathrm{[m^3/s]} と読めます。

(1) 最大使用水量は、1日の流入 6×246 \times 24 を 8 時間で使い切るので、

Qmax⁡=6×248=18 [m3/s]Q_{\max} = \frac{6 \times 24}{8} = 18\ \mathrm{[m^3/s]}

有効貯水量は、止めている 16 時間の流入で、

V=6×16×3600=345 600 [m3]V = 6 \times 16 \times 3600 = 345\,600\ \mathrm{[m^3]}

(2) 流入を 12 [m3/s]12\ \mathrm{[m^3/s]} とみなすと、運転中の不足分を池から補います。

V=(18−12)×8×3600=172 800 [m3]\begin{aligned} V &= (18 - 12) \times 8 \times 3600 \\ &= 172\,800\ \mathrm{[m^3]} \end{aligned}

答え:(1) 18 m3/s18\ \mathrm{m^3/s}、345 600 m3345\,600\ \mathrm{m^3}、(2) 172 800 m3172\,800\ \mathrm{m^3}。

ひっかけ (2) の池は (1) の半分で済みますが、流量が 12 [m3/s]12\ \mathrm{[m^3/s]} を下回る日(一般に、年の 165 日ほど)は、池が足りなくて 8 時間の運転ができません。確保する流量を大きく取るほど、池は小さくて済み、運転できない日が増えます。読み取る日数は問題文で指定されるので、豊水・平水・低水・渇水の日数(95・185・275・355)を取り違えないことが肝心です。

一次式で与えられた流況曲線

型4 式で与えられた流況曲線の日数と電力量

出題の形 流込み式で、流況曲線が日数 dd の一次式で与えられる。最大使用水量を超える日数(溢水日数)、年間の発電電力量、設備利用率を求める。令和6年度下期と令和7年度上期の法規で出た型です。

流込み式は池を持たないので、流量が最大使用水量を超える日は、超えた分が捨てられます(溢水)。年間の使える水量は、流況曲線を最大使用水量の線で切った面積です。

解く手順

  1. 最大使用水量 Qmax⁡Q_{\max} を決める。直接与えられるか、「渇水量の何倍」で与えられる
  2. Q(d)=Qmax⁡Q(d) = Q_{\max} となる日数 d0d_0 を式から求める。これが溢水日数
  3. 使える水量の面積 A=Qmax⁡×d0+Qmax⁡+Q(365)2×(365−d0)A = Q_{\max} \times d_0 + \dfrac{Q_{\max} + Q(365)}{2} \times (365 - d_0)(長方形 + 台形)
  4. 電力量 W=9.8Hη×A×24 [kW⋅h]W = 9.8H\eta \times A \times 24\ \mathrm{[kW \cdot h]}、設備利用率 =AQmax⁡×365= \dfrac{A}{Q_{\max} \times 365}
0 10 20 30 流量 [m³/s] 175 0 365 日数 [日] 使える水量の面積 = 台形 + 長方形 溢水 最大使用水量 20 10.5
図6 一次式の流況曲線(例題4)。20 を超える部分は溢水で、使えるのは線の下の面積
解答と解説を見る

(1) 流量が 20 [m3/s]20\ \mathrm{[m^3/s]} を超えるのは、

28.75−0.05d>20⇒d<17528.75 - 0.05d > 20 \quad\Rightarrow\quad d < 175

より、溢水日数は 175 日です。

(2) 365 日目の流量は 28.75−0.05×365=10.5 [m3/s]28.75 - 0.05 \times 365 = 10.5\ \mathrm{[m^3/s]}。使える水量の面積は、図6の長方形と台形を足して、

A=20×175+20+10.52×190=3500+2897.5=6397.5 [m3/s]⋅[日]\begin{aligned} A &= 20 \times 175 + \frac{20 + 10.5}{2} \times 190 \\ &= 3500 + 2897.5 \\ &= 6397.5\ \mathrm{[m^3/s]} \cdot \text{[日]} \end{aligned}

総合効率は 0.90×0.95=0.8550.90 \times 0.95 = 0.855 なので、

W=9.8×40×0.855×6397.5×24≈5.15×107 [kW⋅h]\begin{aligned} W &= 9.8 \times 40 \times 0.855 \times 6397.5 \times 24 \\ &\approx 5.15 \times 10^{7}\ \mathrm{[kW \cdot h]} \end{aligned}

(3) 設備利用率は、

6397.520×365≈0.876\frac{6397.5}{20 \times 365} \approx 0.876

答え:(1) 175 日、(2) 約 5.15×107 kW⋅h5.15 \times 10^{7}\ \mathrm{kW \cdot h}(約 51.5 GW・h)、(3) 約 87.6 %。

最大使用水量が「渇水量の何倍」で与えられる場合は、先に渇水量を式から読みます。

解答と解説を見る

(1) 渇水量は 355 日目の流量で、28.75−0.05×355=11.0 [m3/s]28.75 - 0.05 \times 355 = 11.0\ \mathrm{[m^3/s]}。最大使用水量は、

Qmax⁡=11.0×1.5=16.5 [m3/s]Q_{\max} = 11.0 \times 1.5 = 16.5\ \mathrm{[m^3/s]}

(2) 溢水の境の日数は、28.75−0.05d=16.528.75 - 0.05d = 16.5 より d=245d = 245 日です。使える水量の面積は、

A=16.5×245+16.5+10.52×120=4042.5+1620=5662.5 [m3/s]⋅[日]\begin{aligned} A &= 16.5 \times 245 + \frac{16.5 + 10.5}{2} \times 120 \\ &= 4042.5 + 1620 \\ &= 5662.5\ \mathrm{[m^3/s]} \cdot \text{[日]} \end{aligned}W=9.8×60×0.80×5662.5×24≈6.39×107 [kW⋅h]\begin{aligned} W &= 9.8 \times 60 \times 0.80 \times 5662.5 \times 24 \\ &\approx 6.39 \times 10^{7}\ \mathrm{[kW \cdot h]} \end{aligned}

(3) 設備利用率は、

5662.516.5×365≈0.940\frac{5662.5}{16.5 \times 365} \approx 0.940

答え:(1) 16.5 m3/s16.5\ \mathrm{m^3/s}、(2) 約 6.39×107 kW⋅h6.39 \times 10^{7}\ \mathrm{kW \cdot h}、(3) 約 94.0 %。

ひっかけ 年間電力量の式の最後の ×24\times 24 は、面積の単位が「m3/s⋅日\mathrm{m^3/s} \cdot \text{日}」なので、日を時間にするために必要です。落とすと 24 分の 1 になります。溢水日数は「流量が最大使用水量を超える日数」で、使える日数ではありません。また、設備利用率を面積の比で求められるのは、落差と効率が一年を通じて一定のときだけです。

揚水の出力・入力・所要時間・変換効率

揚水の計算は、型5〜7の3つに分かれます。どれも 揚水発電とは の式の使い方で、手順は図8の流れの一部を使うだけです。最近の出題では、令和4年度上期、令和6年度上期、令和8年度上期と、およそ2年おきに出ています。

山頂近くの人工の上池。内側斜面は黒い遮水層で覆われ、堤の上に管理道路と取水塔が見える写真
  1. 上池の水面 発電のときの水の出どころで、揚水のときの行き先
  2. 取水塔 上池への水の出入口。発電にも揚水にも使う
  3. 管理道路 堤の上を囲み、点検に使う
  4. 堤の外側斜面 岩石を積んで水圧を支える
図7 山の上の上池。水位の差が、揚水と発電の「落差」になる(写真はイメージ)
1 損失水頭を決める 総落差の x 倍 = x × H0 2 発電は引き、揚水は足す 有効落差 H0(1−x)、全揚程 H0(1+x) 3 出力と入力を出す 発電は × 効率、揚水は ÷ 効率 4 揚水の時間を決める 発電水量 × 時間 = 揚水量 × 時間 5 変換効率を出す 発電電力量 ÷ 揚水電力量
図8 揚水の計算の流れ。型5は1〜3、型6は4と5、型7は3を変形する

型5 揚水の出力と入力

出題の形 総落差と、総落差の何 % かで表された損失水頭が与えられる。発電の出力と、揚水の電動機入力を求める。令和6年度上期と令和8年度上期で出た型です。

解く手順 図8の 1〜3。損失水頭 h=xH0h = xH_0 を、発電では引き(有効落差 H0(1−x)H_0(1-x))、揚水では足す(全揚程 H0(1+x)H_0(1+x))。出力は効率を掛け、入力は効率で割ります。

解答と解説を見る

損失水頭は 320×0.02=6.4 [m]320 \times 0.02 = 6.4\ \mathrm{[m]} です。有効落差は 320−6.4=313.6 [m]320 - 6.4 = 313.6\ \mathrm{[m]}、全揚程は 320+6.4=326.4 [m]320 + 6.4 = 326.4\ \mathrm{[m]} です。

(1) 発電出力は、効率を掛けて、

Pg=9.8×45×313.6×0.89×0.97≈1.19×105 [kW]\begin{aligned} P_g &= 9.8 \times 45 \times 313.6 \times 0.89 \times 0.97 \\ &\approx 1.19 \times 10^{5}\ \mathrm{[kW]} \end{aligned}

(2) 電動機入力は、効率で割って、

Pp=9.8×36×326.40.88×0.97≈1.35×105 [kW]\begin{aligned} P_p &= \frac{9.8 \times 36 \times 326.4}{0.88 \times 0.97} \\ &\approx 1.35 \times 10^{5}\ \mathrm{[kW]} \end{aligned}

答え:(1) 約 1.19×105 kW1.19 \times 10^{5}\ \mathrm{kW}(約 119 MW)、(2) 約 1.35×105 kW1.35 \times 10^{5}\ \mathrm{kW}(約 135 MW)。

ひっかけ 損失水頭を「足す・引く」を逆にすること、効率を「掛ける・割る」を逆にすることの2つです。さらに、発電の水量と揚水の水量が別々に与えられるので、QQ を取り違えないようにします。発電の式に揚水の水量を入れる誤りが、選択肢にそのまま用意されています。

型6 揚水の所要時間と変換効率

出題の形 発電に使った水を、別の水量でくみ戻す。揚水の所要時間と、発電電力量と揚水電力量の比である変換効率を求める。令和8年度上期で出た型です。

解く手順 図8の 4 と 5。まず水量の収支から揚水の時間を決めます。

QgTg=QpTp⇒Tp=QgTgQpQ_g T_g = Q_p T_p \quad\Rightarrow\quad T_p = \frac{Q_g T_g}{Q_p}

次に、変換効率を電力量の比で求めます。

η=PgTgPpTp\eta = \frac{P_g T_g}{P_p T_p}
解答と解説を見る

有効落差は 420×0.97=407.4 [m]420 \times 0.97 = 407.4\ \mathrm{[m]}、全揚程は 420×1.03=432.6 [m]420 \times 1.03 = 432.6\ \mathrm{[m]} です。

(1) Pg=9.8×54×407.4×0.90≈1.94×105 [kW]P_g = 9.8 \times 54 \times 407.4 \times 0.90 \approx 1.94 \times 10^{5}\ \mathrm{[kW]}

(2) Pp=9.8×42×432.60.86≈2.07×105 [kW]P_p = \dfrac{9.8 \times 42 \times 432.6}{0.86} \approx 2.07 \times 10^{5}\ \mathrm{[kW]}

(3) 水の収支から、

Tp=54×742=9 [h]T_p = \frac{54 \times 7}{42} = 9\ \mathrm{[h]}

(4) 発電電力量は 1.940×105×7≈1.358×106 [kW⋅h]1.940 \times 10^{5} \times 7 \approx 1.358 \times 10^{6}\ \mathrm{[kW \cdot h]}、揚水電力量は 2.070×105×9≈1.863×106 [kW⋅h]2.070 \times 10^{5} \times 9 \approx 1.863 \times 10^{6}\ \mathrm{[kW \cdot h]} なので、

η=1.358×1061.863×106≈0.729\eta = \frac{1.358 \times 10^{6}}{1.863 \times 10^{6}} \approx 0.729

約 72.9 [%]72.9\ \mathrm{[\%]} です。検算として、水の収支が合うときは η=407.4432.6×0.90×0.86≈0.729\eta = \dfrac{407.4}{432.6} \times 0.90 \times 0.86 \approx 0.729 となり、水量に関係なく同じ値になります。

答え:(1) 約 1.94×105 kW1.94 \times 10^{5}\ \mathrm{kW}、(2) 約 2.07×105 kW2.07 \times 10^{5}\ \mathrm{kW}、(3) 9 時間、(4) 約 72.9 %。

ひっかけ 揚水の時間を、発電と同じ 7 時間にしてしまうこと。水量が違えば、時間も違います。同じ 7 時間にすると、変換効率が 194÷207≈93.7 [%]194 \div 207 \approx 93.7\ \mathrm{[\%]} のように、不自然に高くなります。揚水の変換効率は、1 より小さく、7 割前後になるのがふつうです。

型7 電動機入力からの逆算

出題の形 全揚程と効率が与えられ、揚げる水量から電動機が使う電力量を求める。または、電動機入力から揚水の流量を求める。令和4年度上期で出た型です。

解く手順 揚水入力の式 P=9.8QH/(ηpηm)P = 9.8QH/(\eta_p \eta_m) を、求めたい量について変形します。流量なら Q=P ηpηm9.8HQ = \dfrac{P\,\eta_p \eta_m}{9.8H}、電力量なら水量 VV から W=9.8VHηpηm×3600 [kW⋅h]W = \dfrac{9.8VH}{\eta_p \eta_m \times 3600}\ \mathrm{[kW \cdot h]} です。

解答と解説を見る

効率の積は 0.85×0.96=0.8160.85 \times 0.96 = 0.816 です。

(1) 水を揚げる仕事は 9.8VH9.8VH で、これを効率で割ります。

W=9.8×2.7×106×4000.816×3600≈3.60×106 [kW⋅h]\begin{aligned} W &= \frac{9.8 \times 2.7 \times 10^{6} \times 400}{0.816 \times 3600} \\ &\approx 3.60 \times 10^{6}\ \mathrm{[kW \cdot h]} \end{aligned}

約 3 600 MW・h です。

(2) 入力 294 [MW]=2.94×105 [kW]294\ \mathrm{[MW]} = 2.94 \times 10^{5}\ \mathrm{[kW]} から、

Q=2.94×105×0.8169.8×400=61.2 [m3/s]Q = \frac{2.94 \times 10^{5} \times 0.816}{9.8 \times 400} = 61.2\ \mathrm{[m^3/s]}

(3) 時間は水量を流量で割って、

T=2.7×10661.2×3600≈12.3 [h]T = \frac{2.7 \times 10^{6}}{61.2 \times 3600} \approx 12.3\ \mathrm{[h]}

検算として、294×12.25≈3 600 [MW⋅h]294 \times 12.25 \approx 3\,600\ \mathrm{[MW \cdot h]} で、(1) と一致します。

答え:(1) 約 3 600 MW・h、(2) 61.2 m3/s61.2\ \mathrm{m^3/s}、(3) 約 12.3 時間。

ひっかけ 電力量の単位です。水を揚げる仕事を 9.8VH9.8VH で出すと、単位は kW⋅s\mathrm{kW \cdot s} なので、36003600 で割って kW⋅h\mathrm{kW \cdot h} にします。さらに、kW⋅h\mathrm{kW \cdot h} を MW⋅h\mathrm{MW \cdot h} にするときは 1000 で割ります。全揚程が、損失水頭を含んだ値として与えられているのか、実揚程と別に与えられているのかも、問題文で確かめます。

故障原因を症状から推定する型

最後は、計算ではなく推論の型です。過去問には、運転中の症状が並べられて、故障の場所を選ばせる問題が出ています。計算は要らないのに難しいと言われる型ですが、考え方は一つで、水の流れを上流から並べ、症状がどこで起きたかに合う場所を探すことです。

図9は、山腹の水槽(ヘッドタンク)から水圧管路が伸びる部分です。水槽の水位は、この写真のように外から見えます。

山腹のコンクリートの水槽に水がたまり、格子の奥から鋼製の水圧管路が斜面を下っていく写真
  1. 水槽の水面 ここの水位が、上流と下流のどちらの異常かを分ける
  2. 格子 ごみが水圧管へ入るのを防ぐ
  3. 水圧管路の入口 ここから下流が、水車までの管
  4. 水圧管路 水槽の水が落ちて、水車へ向かう
図9 水槽と水圧管路の入口。水位の変化が、詰まりの場所を教える(写真はイメージ)

手順 まず、電気側の異常かどうかを見ます。系統に並列しているとき、発電機の電圧と周波数は系統が決めるので、出力が下がっても変わりません。出力は P=9.8QHηP = 9.8QH\eta で決まるので、出力低下は水の量 QQ の減少で説明できます。次に、水槽の水位と水車入口の圧力計の2つで、詰まった場所を絞ります(図10)。

取水口・導水路 水槽(水位計) 水圧管・入口弁 水車入口(圧力計) ガイドベーン・ランナ 吸出し管・放水路 ここが詰まると 水槽の水位が下がる ここが詰まると 水位↑・圧力計↓ ここが詰まると 水位↑・圧力計↑
図10 詰まった場所と症状の対応。水槽の水位と入口の圧力計の2つで、場所が絞れる

水槽より上流が詰まると、水槽に入る水が減るので、水位が下がります。水槽より下流が詰まると、水槽へ入る水が余るので、水位が上がります。下流の詰まりが圧力計より上流(水圧管や入口弁)なら、圧力計の指示は下がり、下流(ガイドベーンやランナ)なら、水が出られず管の中の圧力は上がります。以上は一般的な水の流れの考え方で、設備ごとの細部は異なります。

解答と解説を見る

症状は「流量の低下」「水槽の水位の上昇」「圧力計の上昇」の3つで、電圧・周波数は変わっていません。

  • (ア)(イ) は、水槽より上流の詰まりです。水槽に入る水が減るので、水位は下がります。症状と合いません
  • (ウ) は、圧力計より上流の詰まりです。水位は上がりますが、圧力計は下がります。症状と合いません
  • (オ) は電気側の異常で、電圧や励磁電圧に異常が出るはずです。流量の低下と水槽の水位の上昇を説明できません
  • (エ) は、圧力計より下流の詰まりです。水が通れず流量が減り、水槽の水位は上がり、圧力計の指示も上がります。症状と全て合います

答え:(エ)

ひっかけ 水槽の水位だけで決めると、(ウ) と (エ) が残って決まりません。水位と圧力計の2つの向きの組み合わせで、上流か下流かを分けるのが要点です。選択肢に「発電機の故障」があっても、電圧や周波数が正常なら、電気側ではありません。

よくある質問

揚水の計算で、効率は掛けるのですか、割るのですか?

出力を求める発電は、効率を掛けます。電気がもらえる量は、水の力より小さくなるからです。入力を求める揚水は、効率で割ります。電気を余計に使わないと、必要な水の仕事をさせられないからです。「出力は小さくなる向き、入力は大きくなる向き」と考えると、間違えません。

調整池の容量は、運転時間と休止時間のどちらで計算しますか?

どちらでも同じ値になります。止めている間に貯めた量 Q流入×(24−t)×3600Q_{\text{流入}} \times (24 - t) \times 3600 と、運転中に池から出す量 (Qmax⁡−Q流入)×t×3600(Q_{\max} - Q_{\text{流入}}) \times t \times 3600 が等しいからです。2通りで計算して一致すれば、検算になります。多段運転のときは、時間帯の表で貯水量の最大値を取ります。

選択肢の値と少しずれたときは、どうしますか?

試験の計算問題は、選択肢の値が有効数字 3 桁程度で並んでいて、途中の丸めでずれることがあります。効率の積や 36003600 などを先にまとめて計算し、最後に丸めると、ずれにくくなります。それでも合わないときは、最も近い選択肢を選びます。大きくずれたときは、型の取り違え(時間か、効率の向きか)を疑います。

思い出してみよう

答えを見る前に、まず自分で思い出してからタップしてください。

調整池式で、流入 Q流入Q_{\text{流入}} が一定、1日 tt 時間だけ運転するとき、使用水量と池の容量は?

使用水量は Q=Q流入×24÷tQ = Q_{\text{流入}} \times 24 \div t、容量は V=Q流入×(24−t)×3600 [m3]V = Q_{\text{流入}} \times (24 - t) \times 3600\ \mathrm{[m^3]} です。

多段運転の問題で、有効貯水量はどの時刻の値を取りますか?

時間帯ごとに貯水量を足し引きして、貯水量が最大になった時刻の値です。最初の休止の終わりとは限りません。

一次式の流況曲線で、溢水日数はどう求めますか?

Q(d)=Qmax⁡Q(d) = Q_{\max} を解いた日数 d0d_0 です。それより小さい dd の日が、流量が最大使用水量を超える日です。

損失水頭が総落差の xx 倍のとき、発電と揚水の落差はそれぞれ?

発電は有効落差 H0(1−x)H_0(1 - x)、揚水は全揚程 H0(1+x)H_0(1 + x) です。出力は効率を掛け、入力は効率で割ります。

発電水量 QgQ_g を TgT_g 時間、揚水水量 QpQ_p で行うとき、揚水の所要時間と変換効率は?

Tp=QgTg/QpT_p = Q_g T_g / Q_p で、変換効率は PgTg/(PpTp)P_g T_g / (P_p T_p) です。水量が違っても、1 より小さい値になります。

出力低下で水槽の水位が上がり、水車入口の圧力計も上がったとき、詰まりはどこにありますか?

圧力計より下流の、ガイドベーンやランナなどです。水位が下がるなら水槽の上流、圧力計が下がるなら水槽と圧力計の間を疑います。

まとめ

  • 型は7つ。合図の言葉から型を決め、水の収支で検算する
  • 調整池の1日調整は、使用水量 Q=Q流入×24÷tQ = Q_{\text{流入}} \times 24 \div t、容量は止めている間の流入量
  • 多段運転は、時間帯の表で貯水量を足し引きし、最大値が有効貯水量
  • 流況曲線の読み取りは、渇水量が 355 日、200 日値などを指定の日数で読む
  • 一次式の流況曲線は、溢水日数を式から出し、長方形と台形の面積で電力量と設備利用率を求める
  • 揚水は、発電は引いて掛け、揚水は足して割る。所要時間は水量の収支、変換効率は電力量の比
  • 故障の推定は、電気側が正常かを見て、水槽の水位と圧力計の向きで場所を絞る
型要の式・考え方
調整池の1日調整Q=Q流入×24÷tQ = Q_{\text{流入}} \times 24 \div t、V=Q流入(24−t)×3600V = Q_{\text{流入}}(24 - t) \times 3600
多段運転時間帯ごとの足し引き、最大値が容量
流況曲線の読み取り指定の日数の流量を図から読む
一次式の流況曲線A=Qmax⁡d0+Qmax⁡+Q(365)2(365−d0)A = Q_{\max} d_0 + \dfrac{Q_{\max} + Q(365)}{2}(365 - d_0)
揚水の出力・入力H0(1∓x)H_0(1 \mp x)、発電は掛け、揚水は割る
所要時間と変換効率QgTg=QpTpQ_g T_g = Q_p T_p、η=PgTg/(PpTp)\eta = P_g T_g / (P_p T_p)
電動機入力からの逆算P=9.8QH/(ηpηm)P = 9.8QH/(\eta_p\eta_m) を変形

基本を確かめたいときは、流況曲線とは、揚水発電とは、水力発電の出力の求め方 に戻ってください。次は、計算ではなく正誤の問題です。次に読む記事は 水力発電の正誤問題のポイント です。

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デンケンラボ編集部

電験三種の合格プランをつくる問題集アプリ「デンケンラボ」の編集部です。試験センターの出題範囲に沿って、計算の考え方と覚えどころを図と式で解説しています。

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