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電力発電所 / 水力発電18分で読めます

速度調定率とは|調速機のしくみ・速度変動率の計算・水撃作用を図解

電験三種の速度調定率と速度変動率の式と計算を、調速機がガイドベーンで回転速度を一定に保つしくみから図解します。負荷遮断時の水撃作用とサージタンクの役割まで、例題3問と解答つきです。

2026年10月28日に更新

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高い天井の水力発電所の発電機室に縦軸の水車発電機が並び、手前に制御盤が置かれている写真
この記事の目次
  1. 調速機と水撃作用とは
  2. 調速機のしくみ:回転速度を一定に保つ
  3. 並列の前は速度制御、並列のあとは出力制御
  4. 速度調定率の求め方
  5. 速度調定率が小さいと何が起こるか
  6. 調定率の違う 2 台が周波数低下を分担する(ガバナフリー運転)
  7. 負荷遮断と速度変動率
  8. 調速機の閉じる速さと水撃作用
  9. 水撃作用とサージタンク
  10. 水撃作用とは
  11. サージタンクの役割
  12. よくある質問
  13. 速度調定率と速度変動率は何が違いますか。
  14. 調速機はなるべく速く動かしたほうがよいのではありませんか。
  15. サージタンクと水槽は何が違いますか。
  16. まとめ
図解でわかる 電験三種 電力 1 水力発電 の表紙この単元を1冊で読む図解でわかる 電験三種 電力 1
水力発電
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水車発電機とは で、回転速度 NN で周波数が決まることを見ました。調速機は、負荷が変わってもその回転速度を一定に保つために、水車に流れ込む水の量を自動で加減する装置です。ただし水を急に絞ると、水圧管路の中で圧力が急に上がる水撃作用が起こるので、サージタンクなどで和らげます。この記事では、調速機のしくみ、速度調定率と速度変動率の計算、水撃作用とサージタンクを順に整理します。

調速機と水撃作用の全体像
  • 調速機と水撃作用とは
    • 回転速度を一定に保つ装置と、その副作用
    • 水の流れの断面のどこの話か
  • 調速機のしくみ
    • 検出、比較、増幅、駆動の 4 段で水量を加減する
    • ペルトンはニードル弁とデフレクタ、反動水車はガイドベーン
    • 並列前は速度制御、並列後は出力制御
  • 速度調定率の求め方
    • 出力変化に対する速度変化の割合
    • 小さいほど周波数の変化に敏感に出力を変える
    • 調定率の違う 2 台が周波数低下を分担する
  • 負荷遮断と速度変動率
    • 負荷が急になくなると、回転速度が一時的に上がる
    • 閉鎖時間で、速度上昇と水撃圧が逆向きに変わる
  • 水撃作用とサージタンク
    • 水が急に止められると、圧力波が管を往復する
    • 管が長いほど、閉鎖時間が短いほど大きい
    • サージタンク(差動式・小孔式・水室式)が水位を上下させて圧力の急変を吸収する

調速機と水撃作用とは

発電機の回転速度が変われば、周波数が変わります。水車は、水が流れ込む量が同じでも、発電機の電気出力(負荷)が減れば、余ったエネルギーで加速します。逆に負荷が増えれば減速します。そこで、回転速度を測り、ずれに応じて水量を加減する装置が 調速機(ガバナ) です。

水量を加減する場所は、水の流れの終点、水車の入口にあります。図1は、水力発電のしくみ の水の通り道を縦に並べ直したものです。橙の枠が、この記事で扱う設備です。

水槽・導水路 サージタンク 水圧管路 入口弁 水車(ガイドベーン) 発電機 水撃作用による 圧力の急変を和らげる 水が急に止まると 水撃作用が起こる 停止や点検のときに 水を止める 調速機がガイドベーンを 動かして回転速度を保つ 回転速度 N で 周波数が決まる
図1 水の流れの断面。橙の枠が、この記事で扱うサージタンクと、調速機が動かす水車の入口

調速機は水量を絞るのが仕事ですが、水圧管路の水は重く、急には止まれません。流れを急に変えると圧力が跳ね上がる、これが 水撃作用 です。調速機の速さと水撃作用は、片方をよくすると片方が悪くなる関係にあります。この関係が、この単元の中心です。

調速機のしくみ:回転速度を一定に保つ

調速機は、次の 4 つの働きを順に行って、回転速度のずれを水量の加減に変えます。図2は、その流れを 1 周する輪にしたものです。

速度検出部 回転速度 N を測る 速度設定・比較 設定した速度との差を出す 配圧弁 差に応じて油の向きを切り替える サーボモータ 油圧の大きな力で動かす ガイドベーン(ニードル弁) 水量を加減して水車の出力を変える 回転速度が 変わると 再び検出
図2 調速機の制御の輪。回転速度のずれを水量の加減に変え、ずれを小さくする向きに働く
段部分働き
1速度検出部水車発電機の回転速度を測る。古くは遠心力を使う機械式、いまは電気式が主流
2速度設定・比較設定した速度と比べて、ずれ(偏差)を出す
3配圧弁ずれに応じて油の通り道を切り替え、サーボモータの動く向きを決める
4サーボモータ油圧の力でガイドベーンやニードル弁を動かす。水量を調節する弁を動かすには大きな力が要るので、油圧で増幅する

測った回転速度を戻して設定と比べるこの形は、フィードバック制御です。信号の流れを式で扱う方法は、機械科目のブロック線図と伝達関数で整理しています。

図3は、調速機の盤と油圧装置です。油圧ポンプで油に圧力をかけ、油の流れを弁で切り替えて、サーボモータへ送ります。

調速機の制御盤と、電動機、油圧計、弁ユニット、油タンクが一体になった油圧装置の写真
  1. 制御盤 速度の検出と比較をして、動かす指令を出す
  2. 油圧計 油の圧力を確かめる計器
  3. 電動機 油圧ポンプを回して、油に圧力をかける
  4. 弁ユニット 油の流れる向きを切り替える
  5. 油タンク 油圧回路の油をためておく
図3 調速機の盤と油圧装置(写真はイメージ)

サーボモータは、水車のガイドベーンを動かすリンク機構につながっています(図4)。

水車の外周に取り付けられた油圧のサーボモータと、そのピストン棒につながるレバーと連結ロッドの写真
  1. 水車の外周 内側にガイドベーンが並ぶ
  2. サーボモータ 油圧でピストン棒を押し引きする
  3. レバー 直線の動きを回す動きに変える
  4. 連結ロッド 動きを外周のリンクへ伝える
図4 ガイドベーンを動かすサーボモータとリンク機構(写真はイメージ)

動かす相手は水車の種類で変わります。

水車調速機が動かすものひとこと
ペルトン水車ニードル弁とデフレクタニードル弁で噴流の太さを、デフレクタで噴流の向きを変える
フランシス水車ガイドベーンガイドベーンの開きで水量を加減する
カプラン水車ガイドベーンとランナ羽根水量に合わせて羽根の角度も連動して変える

各水車の構造は 水車の種類と選び方 で扱います。ペルトン水車でデフレクタを使うのは、次の節で出てくる負荷遮断のときの工夫です。

並列の前は速度制御、並列のあとは出力制御

調速機の働きは、発電機が系統につながる前と後で変わります。

状態調速機の働き保たれるもの
並列前(起動して系統につなぐまで)回転速度を目標値に合わせる(速度制御)回転速度=周波数
並列後(系統につながったあと)設定した出力になるよう水量を加減する(出力制御)出力。速度は系統の周波数で決まる

並列後は、系統の周波数が発電機の回転速度を決めてしまうので、調速機が水量を増やせば、速度が上がるのではなく出力が増えます。なお、電圧を一定に保つのは調速機ではなく AVR の役目で、役割分担は 水車発電機とは の励磁の節にあります。

調速機が動くと、同じ系統につながった発電機の周波数が変化したときにも、出力が自動で増減します。これが、周波数の安定に役立つ調速機の働きです。その増減の大きさを決めるのが、次の速度調定率です。

速度調定率の求め方

速度調定率 RR は、出力が変わったとき、定常状態の回転速度がどれだけ変わるかを表す割合です。出力が P1P_1 から P2P_2 に変わり、回転速度が N1N_1 から N2N_2 に変わったとき、次の式で表します。NnN_n は定格速度、PnP_n は定格出力です。

R=N2−N1NnP1−P2Pn×100 [%]R = \frac{\dfrac{N_2 - N_1}{N_n}}{\dfrac{P_1 - P_2}{P_n}} \times 100\ \mathrm{[\%]}

分子は「速度の変化の割合」、分母は「出力の変化の割合」です。つまり、出力の変化の割合に対する、速度の変化の割合です。特に、定格出力から無負荷まで下げたときの速度が N0N_0 なら、次の形になります。

R=N0−NnNn×100 [%]R = \frac{N_0 - N_n}{N_n} \times 100\ \mathrm{[\%]}

図5は、出力と回転速度の関係です。調速機は、出力が減るほど回転速度が上がる、右下がりの特性を持たせてあります。この直線の傾きが速度調定率です。

回転速度 N 出力 P N0 Nn Pn P2 P1 (P2, N2) (P1, N1) 右下がりの直線の傾き = 速度調定率 R
図5 出力が減ると回転速度が上がる特性。無負荷速度 N0 から定格速度 Nn まで下がる傾きが R

速度調定率が小さいと何が起こるか

回転速度、つまり周波数が少し変わっただけで、出力が大きく変わります。系統の周波数の変化に敏感に出力を増減する調速機です。変化の割合で書くと、次の関係です。

ΔPPn=1R⋅ΔNNn\frac{\Delta P}{P_n} = \frac{1}{R}\cdot\frac{\Delta N}{N_n}

速度調定率は数 %(3〜5 % 程度が目安)に設定されます。複数の発電機を並列に運転しているとき、RR が同じなら、周波数が変わったときの出力の増減は、定格出力に比例して分担されます。

解答と解説を見る

(1) 定格出力から無負荷への変化なので、

R=N0−NnNn×100=312−300300×100=4 [%]\begin{aligned} R &= \frac{N_0 - N_n}{N_n}\times 100 \\ &= \frac{312 - 300}{300}\times 100 \\ &= 4\ \mathrm{[\%]} \end{aligned}

(2) 速度が 1 [%]1\ \mathrm{[\%]} 上がったので、出力は定格の 1/R1/R 倍の割合で減ります。回転速度は周波数に比例するので、問題で「周波数が 0.5 [Hz]0.5\ \mathrm{[Hz]}(50 [Hz]50\ \mathrm{[Hz]} の 1 [%]1\ \mathrm{[\%]})上がった」と与えられても、同じ式で解けます。

ΔPPn=10.04×0.01=0.25\frac{\Delta P}{P_n} = \frac{1}{0.04}\times 0.01 = 0.25

定格出力の 25 [%]25\ \mathrm{[\%]}、つまり 50×0.25=12.5 [MW]50 \times 0.25 = 12.5\ \mathrm{[MW]} 減ります。

答え:(1) 4 [%]4\ \mathrm{[\%]} (2) 定格出力の 25 [%]25\ \mathrm{[\%]}、12.5 [MW]12.5\ \mathrm{[MW]} 減

調定率の違う 2 台が周波数低下を分担する(ガバナフリー運転)

調速機の調定率に任せて、周波数の変化に応じて出力を自動で増減させる運転を、ガバナフリー運転といいます。複数台が運転しているとき、周波数が下がると、各台が ΔPPn=1R⋅Δffn\dfrac{\Delta P}{P_n} = \dfrac{1}{R}\cdot\dfrac{\Delta f}{f_n} だけ出力を増やし、その合計が負荷の増加分を受け持ちます。

解答と解説を見る

周波数の低下の割合を x=Δf/fnx = \Delta f / f_n とおくと、各機の出力増加は、

  • 火力機:x0.04×400=10000 x [MW]\dfrac{x}{0.04}\times 400 = 10000\,x\ \mathrm{[MW]}
  • 水力機:x0.025×200=8000 x [MW]\dfrac{x}{0.025}\times 200 = 8000\,x\ \mathrm{[MW]}

この合計が負荷の増加 90 [MW]90\ \mathrm{[MW]} に等しいので、

(10000+8000) x=90x=0.005\begin{gathered} (10000 + 8000)\,x = 90 \\ x = 0.005 \end{gathered}

周波数の低下は 50×0.005=0.25 [Hz]50 \times 0.005 = 0.25\ \mathrm{[Hz]}。水力機の増加は 8000×0.005=40 [MW]8000 \times 0.005 = 40\ \mathrm{[MW]} です(火力機は 50 [MW]50\ \mathrm{[MW]})。

答え:周波数は 0.25 [Hz]0.25\ \mathrm{[Hz]} 低下、水力機は 40 [MW]40\ \mathrm{[MW]} 増

負荷遮断と速度変動率

負荷遮断 は、送電線の事故などで、発電機の負荷が急に切り離されることです。水車には水が流れ込み続けているのに、電気として出ていく先が無くなるので、エネルギーが余り、水車発電機は加速します。調速機はすぐにガイドベーンを閉じ始めますが、閉じ終わるまでの間に、回転速度は一時的に上がります。

このときの最大の回転速度が、定格速度よりどれだけ高いかを表すのが 速度変動率 δ\delta です。最大速度を Nmax⁡N_{\max} とすると、次の式です。

δ=Nmax⁡−NnNn×100 [%]\delta = \frac{N_{\max} - N_n}{N_n}\times 100\ \mathrm{[\%]}

図6は、負荷遮断のあとの回転速度の変化です。調速機が働いて、速度は最大値からしだいに下がり、無負荷の速度に落ち着きます。

回転速度 N 時間 負荷遮断 Nmax Nn 最大速度 − 定格速度 を定格速度で割る = 速度変動率 δ 調速機が閉じて、無負荷の速度に落ち着く
図6 負荷遮断のあとの回転速度。最大値と定格速度の差を定格速度で割ったものが速度変動率

速度変動率は、小さいほど水車発電機にとって安全です。回転速度が上がりすぎると、回転部に働く遠心力が回転速度の 2 乗に比例して増え、回転子や軸を傷めます。

解答と解説を見る

定格速度は、N=120f/pN = 120f/p より、

Nn=120×5012=500 [min−1]N_n = \frac{120 \times 50}{12} = 500\ \mathrm{[min^{-1}]}

速度変動率は、

δ=575−500500×100=15 [%]\delta = \frac{575 - 500}{500}\times 100 = 15\ \mathrm{[\%]}

答え:15 [%]15\ \mathrm{[\%]}

調速機の閉じる速さと水撃作用

速度の上昇を小さくしたいなら、ガイドベーンをできるだけ速く閉じればよいのですが、そうすると水圧管路の水が急に止められて、水撃作用が大きくなります。閉鎖時間による違いは次のとおりです。

閉鎖時間速度上昇水撃作用
短い(速く閉じる)小さい大きい
長い(ゆっくり閉じる)大きい小さい

どちらも大きくなりすぎないように、閉鎖時間は両方の限度の中間で決めます。ペルトン水車は、先に デフレクタ で噴流をそらして水車へ当たる水を一瞬で減らし、ニードル弁はゆっくり閉じます。水車は速く守れて、管の中の水の流れはゆっくり止まるので、速度上昇と水撃作用を両立できます。

水撃作用とサージタンク

水撃作用とは

水撃作用 は、管の中を流れる水を弁などで急に止めたとき、水の勢いが圧力に変わり、管の中の圧力が急に高くなる現象です。水の運動エネルギーの行き場がなくなって、圧力として出てくるイメージです。

図7は、その様子です。圧力の高い部分が、圧力波として弁から水槽の方へ伝わり、水槽側で跳ね返って、往復しながら減衰します。

(a) 弁が開いている:水は一定の速さで流れる 水槽 流速 v 弁 (b) 弁を急に閉じる:圧力が急上昇する 水槽 圧力が急上昇 圧力波が管を上流へ伝わる 水槽側で跳ね返り、往復しながら次第に減衰する
図7 水撃作用。弁を急に閉じると、弁の手前の圧力が急に上がり、圧力波が管を伝わる

圧力の上がり方の目安は、流速の変化 Δv\Delta v、水の密度 ρ\rho、圧力波が伝わる速さ aa を使った、次のジューコフスキーの式です。

Δp=ρ a Δv\Delta p = \rho\, a\, \Delta v

圧力波の速さ aa は、水中の音の速さに近い値で、鋼管では 1000 [m/s]1000\ \mathrm{[m/s]} 前後です。ρ=1000 [kg/m3]\rho = 1000\ \mathrm{[kg/m^3]}、a=1000 [m/s]a = 1000\ \mathrm{[m/s]} として流速を 1 [m/s]1\ \mathrm{[m/s]} だけ急に止めると、Δp=1000×1000×1=1×106 [Pa]\Delta p = 1000 \times 1000 \times 1 = 1 \times 10^6\ \mathrm{[Pa]} で、水の高さに直すと約 100 [m]100\ \mathrm{[m]} 分です。流れをごくわずか止めただけでも、大きな圧力が出ることが分かります。この式が示すのは、圧力上昇は流速の変化の大きさに比例し、急に止めるほど(閉鎖時間が圧力波の往復時間より短いほど)最大になる、という関係です。

水撃作用の大きさは、次の条件で決まります。いずれも試験で問われます。

条件水撃作用が大きくなるのは
水圧管の長さ長いほど大きい(管の中の水の量が増え、止めるのが難しい)
閉鎖時間短いほど大きい(急に止めるほど大きい)
管の中の流速速いほど大きい(Δp=ρaΔv\Delta p = \rho a \Delta v)

閉鎖時間が圧力波の往復より長い場合の目安は、Δp≈ρLΔvT\Delta p \approx \rho L \dfrac{\Delta v}{T}(LL は管の長さ、TT は閉鎖時間)で、管が長いほど、閉鎖時間が短いほど大きいことが式からも分かります。

水撃作用の対策は、次のとおりです。

対策内容
ガイドベーンをゆっくり閉じる流速の変化を時間で薄めて、圧力のピークを下げる
管の流速を下げる管の太さを大きくして、流速自体を小さくする
サージタンクを置く水圧管路の手前で圧力の急変を吸収する
制圧機を置く反動水車で、ガイドベーンの閉鎖に合わせて水を逃がし、管の水の流れの変化をゆるめる

水を急に止めて圧力が上がる水撃作用に対し、水車が急に水を欲しがったときには、管の中の圧力が下がる向きに変化します。どちらの向きの変化も、管の強度と運転の安全に関わります。

水圧管路の途中に設置された大口径の鋼製のバタフライ弁と、弁を動かす油圧シリンダ、管のフランジの写真
  1. 弁体 円盤が回って水の通り道を開け閉めする
  2. 操作シリンダ 油圧で弁体を回す
  3. フランジ ボルトで管どうしを結ぶ
  4. 水圧管 水が通る太い鋼の管
図8 水圧管路の入口弁(バタフライ弁)(写真はイメージ)

入口弁は、水車や水圧管路の点検のときや、水車が停止したときに水を止めるための弁です。運転中の水量の調節は、ガイドベーンの役目です。

サージタンクの役割

サージタンク は、導水路(圧力トンネル)と水圧管路のつなぎ目の近くに立てる、水位が上下する塔です。圧力トンネルの末端に置き、水撃作用の圧力変化がトンネルへ伝わるのを防ぎ、水車への水の増減に対応します。

  • 負荷遮断のとき:水圧管路へ行く水が減る。行き場を失った導水路の水がサージタンクへ流れ込み、水位が上がる。圧力の急上昇がトンネルまで伝わらない
  • 負荷が急に増えたとき:水車が多くの水を欲しがる。サージタンクにためた水が不足分を補う
山の尾根に立つ円筒形のコンクリートの塔と、その足元から斜面を下る鋼製の水圧管の写真
  1. サージタンク 水位が上下して圧力の急変を吸収する塔
  2. 頂部 水位が上がっても溢れない高さに造る
  3. 接続部 下で導水路と水圧管路が合流する
  4. 水圧管路 水車まで水を落として運ぶ鋼管
図9 山の上のサージタンク(写真はイメージ)

図10は、負荷遮断の直後に何が起こるかを、通常運転と比べたものです。

(a) 通常運転:水は導水路から水車へ流れる サージタンク 水車 導水路 水圧管路 (b) 負荷遮断直後:水の勢いでタンクの水位が上がる 水車 導水路 水圧管路 水位が上がる ガイドベーンが閉じる 水位は上下に揺れながら、次第に静まる
図10 負荷遮断の直後、導水路の水がサージタンクへ流れ込む。水位が上下して圧力の急変を吸収する

サージタンクの形には、いくつかの種類があります。試験では、差動式・小孔式・水室式といった言い方で出ます。

種類特徴
単動式(単純式)単純な円筒形。構造は簡単だが、水位の振動が静まるまで時間がかかる
制水口式(小孔式)タンクと導水路のつなぎ目に細い穴(制水口)を設け、水の出入りに抵抗を与えて水位の振動を早く静める
差動式中央に立ち上がり管(ライザ)を持つ二重構造で、水位の変化に素早く対応しながら、水位の振動を早く静める
水室式タンクの上部や下部に広い水室を設け、水位の上下幅を小さくする

名前の呼び方は、本によって少し違います。制水口式を小孔式とも呼びます。どの種類も、水面は大気に開放されていて、密閉構造ではありません。水槽(ヘッドタンク)も同じく大気に開放です。「サージタンクはいずれも密閉構造である」という記述は誤りです。

解答と解説を見る

閉鎖時間を長くすると、遮断後も水が水車へ流れ続ける時間が長くなるので、回転速度の上昇(速度変動率)は大きくなります。一方、水の流れの変化がゆるやかになるので、水撃作用による圧力上昇は小さくなります。

答え:(2)

よくある質問

速度調定率と速度変動率は何が違いますか。

速度調定率は、定常状態での出力と回転速度の関係で、出力の変化の割合に対する速度の変化の割合です。速度変動率は、負荷遮断の直後に起こる一時的な最大の速度上昇を、定格速度に対する割合で表したものです。前者は系統での出力の分担や周波数の安定、後者は水車発電機の機械的な安全を考える指標です。

調速機はなるべく速く動かしたほうがよいのではありませんか。

速く閉じれば速度の上昇は抑えられますが、水撃作用が大きくなり、水圧管路を傷めるおそれがあります。調速機の閉鎖時間は、速度上昇と圧力上昇の両方が許せる範囲の中間で決めます。ペルトン水車のデフレクタのように、水車に当たる水と管の中の水を別々に制御する工夫もあります。

サージタンクと水槽は何が違いますか。

どちらも導水路の末端にあって水圧管路へ水を送ります。開水路や無圧トンネルなら水槽、水で満たした圧力トンネルならサージタンクを置きます。サージタンクは水位が上下することで、水撃作用による圧力の急変がトンネルへ伝わるのを防ぎます。どちらも水面は大気に開放されています。

思い出してみよう

答えを見る前に、まず自分で思い出してからタップしてください。

調速機は何を測り、何を動かして回転速度を一定に保ちますか?

回転速度を測り、ずれに応じてガイドベーン(ペルトンはニードル弁)を動かして、水量を加減します。並列前は速度を、並列後は出力を制御します。

速度調定率の式を、変化の割合の形で言うとどうなりますか?

出力の変化の割合に対する、速度の変化の割合です。小さいほど、周波数の変化に敏感に出力を変えます。

定格出力から無負荷にしたときの速度が N0N_0 なら、速度調定率はどう書けますか?

R=(N0−Nn)/Nn×100 [%]R = (N_0 - N_n)/N_n \times 100\ \mathrm{[\%]} です。

速度変動率は、どんなときの何を表しますか?

負荷遮断のときの最大回転速度が、定格速度よりどれだけ高いかの割合です。

ガイドベーンの閉鎖時間を長くすると、速度上昇と水撃圧はどうなりますか?

速度上昇は大きく、水撃圧は小さくなります。短いと、その逆です。水圧管が長いほど水撃は大きくなります。

サージタンクは何のために、どこに置きますか?種類は?

圧力トンネルと水圧管路のつなぎ目の近くに置き、水位が上下することで水撃作用の圧力の急変を吸収します。単動式・制水口(小孔)式・差動式・水室式があり、すべて大気開放です。

まとめ

  • 調速機は、回転速度を測り、ずれに応じてガイドベーンやニードル弁を動かして、水車の水量を加減する装置
  • 速度調定率 R=(N2−N1)/Nn(P1−P2)/Pn×100 [%]R = \dfrac{(N_2-N_1)/N_n}{(P_1-P_2)/P_n}\times 100\ \mathrm{[\%]}。出力の変化に対する速度の変化の割合で、小さいほど出力が敏感に変わる
  • 速度変動率 δ=Nmax⁡−NnNn×100 [%]\delta = \dfrac{N_{\max}-N_n}{N_n}\times 100\ \mathrm{[\%]}。負荷遮断のときの最大速度の上昇の割合
  • 閉鎖時間が短いと速度上昇は小さいが水撃圧は大きく、長いと逆になる
  • 水撃作用は、水を急に止めたときの圧力上昇。水圧管が長いほど、閉鎖時間が短いほど大きい。サージタンク(差動式・小孔式・水室式など。大気開放)が水位の上下で吸収する
  • 調速機は並列前に速度を、並列後に出力を制御する。調定率の違う複数台は、周波数の変化に対し ΔP/Pn=(1/R)(Δf/fn)\Delta P/P_n = (1/R)(\Delta f/f_n) ずつ分担する

前の記事は 水車発電機とは、ガイドベーンや各水車の構造は 水車の種類と選び方 にあります。次は、水を高い所へ戻して電気をためる 揚水発電とは で、水力発電の全体を一周します。

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