速度調定率とは|調速機のしくみ・速度変動率の計算・水撃作用を図解
電験三種の速度調定率と速度変動率の式と計算を、調速機がガイドベーンで回転速度を一定に保つしくみから図解します。負荷遮断時の水撃作用とサージタンクの役割まで、例題3問と解答つきです。
2026年10月28日に更新

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水車発電機とは で、回転速度 で周波数が決まることを見ました。調速機は、負荷が変わってもその回転速度を一定に保つために、水車に流れ込む水の量を自動で加減する装置です。ただし水を急に絞ると、水圧管路の中で圧力が急に上がる水撃作用が起こるので、サージタンクなどで和らげます。この記事では、調速機のしくみ、速度調定率と速度変動率の計算、水撃作用とサージタンクを順に整理します。
- 調速機と水撃作用とは
- 回転速度を一定に保つ装置と、その副作用
- 水の流れの断面のどこの話か
- 調速機のしくみ
- 検出、比較、増幅、駆動の 4 段で水量を加減する
- ペルトンはニードル弁とデフレクタ、反動水車はガイドベーン
- 並列前は速度制御、並列後は出力制御
- 速度調定率の求め方
- 出力変化に対する速度変化の割合
- 小さいほど周波数の変化に敏感に出力を変える
- 調定率の違う 2 台が周波数低下を分担する
- 負荷遮断と速度変動率
- 負荷が急になくなると、回転速度が一時的に上がる
- 閉鎖時間で、速度上昇と水撃圧が逆向きに変わる
- 水撃作用とサージタンク
- 水が急に止められると、圧力波が管を往復する
- 管が長いほど、閉鎖時間が短いほど大きい
- サージタンク(差動式・小孔式・水室式)が水位を上下させて圧力の急変を吸収する
調速機と水撃作用とは
発電機の回転速度が変われば、周波数が変わります。水車は、水が流れ込む量が同じでも、発電機の電気出力(負荷)が減れば、余ったエネルギーで加速します。逆に負荷が増えれば減速します。そこで、回転速度を測り、ずれに応じて水量を加減する装置が 調速機(ガバナ) です。
水量を加減する場所は、水の流れの終点、水車の入口にあります。図1は、水力発電のしくみ の水の通り道を縦に並べ直したものです。橙の枠が、この記事で扱う設備です。
調速機は水量を絞るのが仕事ですが、水圧管路の水は重く、急には止まれません。流れを急に変えると圧力が跳ね上がる、これが 水撃作用 です。調速機の速さと水撃作用は、片方をよくすると片方が悪くなる関係にあります。この関係が、この単元の中心です。
調速機のしくみ:回転速度を一定に保つ
調速機は、次の 4 つの働きを順に行って、回転速度のずれを水量の加減に変えます。図2は、その流れを 1 周する輪にしたものです。
| 段 | 部分 | 働き |
|---|---|---|
| 1 | 速度検出部 | 水車発電機の回転速度を測る。古くは遠心力を使う機械式、いまは電気式が主流 |
| 2 | 速度設定・比較 | 設定した速度と比べて、ずれ(偏差)を出す |
| 3 | 配圧弁 | ずれに応じて油の通り道を切り替え、サーボモータの動く向きを決める |
| 4 | サーボモータ | 油圧の力でガイドベーンやニードル弁を動かす。水量を調節する弁を動かすには大きな力が要るので、油圧で増幅する |
測った回転速度を戻して設定と比べるこの形は、フィードバック制御です。信号の流れを式で扱う方法は、機械科目のブロック線図と伝達関数で整理しています。
図3は、調速機の盤と油圧装置です。油圧ポンプで油に圧力をかけ、油の流れを弁で切り替えて、サーボモータへ送ります。

- 制御盤 速度の検出と比較をして、動かす指令を出す
- 油圧計 油の圧力を確かめる計器
- 電動機 油圧ポンプを回して、油に圧力をかける
- 弁ユニット 油の流れる向きを切り替える
- 油タンク 油圧回路の油をためておく
サーボモータは、水車のガイドベーンを動かすリンク機構につながっています(図4)。

- 水車の外周 内側にガイドベーンが並ぶ
- サーボモータ 油圧でピストン棒を押し引きする
- レバー 直線の動きを回す動きに変える
- 連結ロッド 動きを外周のリンクへ伝える
動かす相手は水車の種類で変わります。
| 水車 | 調速機が動かすもの | ひとこと |
|---|---|---|
| ペルトン水車 | ニードル弁とデフレクタ | ニードル弁で噴流の太さを、デフレクタで噴流の向きを変える |
| フランシス水車 | ガイドベーン | ガイドベーンの開きで水量を加減する |
| カプラン水車 | ガイドベーンとランナ羽根 | 水量に合わせて羽根の角度も連動して変える |
各水車の構造は 水車の種類と選び方 で扱います。ペルトン水車でデフレクタを使うのは、次の節で出てくる負荷遮断のときの工夫です。
並列の前は速度制御、並列のあとは出力制御
調速機の働きは、発電機が系統につながる前と後で変わります。
| 状態 | 調速機の働き | 保たれるもの |
|---|---|---|
| 並列前(起動して系統につなぐまで) | 回転速度を目標値に合わせる(速度制御) | 回転速度=周波数 |
| 並列後(系統につながったあと) | 設定した出力になるよう水量を加減する(出力制御) | 出力。速度は系統の周波数で決まる |
並列後は、系統の周波数が発電機の回転速度を決めてしまうので、調速機が水量を増やせば、速度が上がるのではなく出力が増えます。なお、電圧を一定に保つのは調速機ではなく AVR の役目で、役割分担は 水車発電機とは の励磁の節にあります。
調速機が動くと、同じ系統につながった発電機の周波数が変化したときにも、出力が自動で増減します。これが、周波数の安定に役立つ調速機の働きです。その増減の大きさを決めるのが、次の速度調定率です。
速度調定率の求め方
速度調定率 は、出力が変わったとき、定常状態の回転速度がどれだけ変わるかを表す割合です。出力が から に変わり、回転速度が から に変わったとき、次の式で表します。 は定格速度、 は定格出力です。
分子は「速度の変化の割合」、分母は「出力の変化の割合」です。つまり、出力の変化の割合に対する、速度の変化の割合です。特に、定格出力から無負荷まで下げたときの速度が なら、次の形になります。
図5は、出力と回転速度の関係です。調速機は、出力が減るほど回転速度が上がる、右下がりの特性を持たせてあります。この直線の傾きが速度調定率です。
速度調定率が小さいと何が起こるか
回転速度、つまり周波数が少し変わっただけで、出力が大きく変わります。系統の周波数の変化に敏感に出力を増減する調速機です。変化の割合で書くと、次の関係です。
速度調定率は数 %(3〜5 % 程度が目安)に設定されます。複数の発電機を並列に運転しているとき、 が同じなら、周波数が変わったときの出力の増減は、定格出力に比例して分担されます。
解答と解説を見る
(1) 定格出力から無負荷への変化なので、
(2) 速度が 上がったので、出力は定格の 倍の割合で減ります。回転速度は周波数に比例するので、問題で「周波数が ( の )上がった」と与えられても、同じ式で解けます。
定格出力の 、つまり 減ります。
答え:(1) (2) 定格出力の 、 減
調定率の違う 2 台が周波数低下を分担する(ガバナフリー運転)
調速機の調定率に任せて、周波数の変化に応じて出力を自動で増減させる運転を、ガバナフリー運転といいます。複数台が運転しているとき、周波数が下がると、各台が だけ出力を増やし、その合計が負荷の増加分を受け持ちます。
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周波数の低下の割合を とおくと、各機の出力増加は、
- 火力機:
- 水力機:
この合計が負荷の増加 に等しいので、
周波数の低下は 。水力機の増加は です(火力機は )。
答え:周波数は 低下、水力機は 増
負荷遮断と速度変動率
負荷遮断 は、送電線の事故などで、発電機の負荷が急に切り離されることです。水車には水が流れ込み続けているのに、電気として出ていく先が無くなるので、エネルギーが余り、水車発電機は加速します。調速機はすぐにガイドベーンを閉じ始めますが、閉じ終わるまでの間に、回転速度は一時的に上がります。
このときの最大の回転速度が、定格速度よりどれだけ高いかを表すのが 速度変動率 です。最大速度を とすると、次の式です。
図6は、負荷遮断のあとの回転速度の変化です。調速機が働いて、速度は最大値からしだいに下がり、無負荷の速度に落ち着きます。
速度変動率は、小さいほど水車発電機にとって安全です。回転速度が上がりすぎると、回転部に働く遠心力が回転速度の 2 乗に比例して増え、回転子や軸を傷めます。
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定格速度は、 より、
速度変動率は、
答え:
調速機の閉じる速さと水撃作用
速度の上昇を小さくしたいなら、ガイドベーンをできるだけ速く閉じればよいのですが、そうすると水圧管路の水が急に止められて、水撃作用が大きくなります。閉鎖時間による違いは次のとおりです。
| 閉鎖時間 | 速度上昇 | 水撃作用 |
|---|---|---|
| 短い(速く閉じる) | 小さい | 大きい |
| 長い(ゆっくり閉じる) | 大きい | 小さい |
どちらも大きくなりすぎないように、閉鎖時間は両方の限度の中間で決めます。ペルトン水車は、先に デフレクタ で噴流をそらして水車へ当たる水を一瞬で減らし、ニードル弁はゆっくり閉じます。水車は速く守れて、管の中の水の流れはゆっくり止まるので、速度上昇と水撃作用を両立できます。
水撃作用とサージタンク
水撃作用とは
水撃作用 は、管の中を流れる水を弁などで急に止めたとき、水の勢いが圧力に変わり、管の中の圧力が急に高くなる現象です。水の運動エネルギーの行き場がなくなって、圧力として出てくるイメージです。
図7は、その様子です。圧力の高い部分が、圧力波として弁から水槽の方へ伝わり、水槽側で跳ね返って、往復しながら減衰します。
圧力の上がり方の目安は、流速の変化 、水の密度 、圧力波が伝わる速さ を使った、次のジューコフスキーの式です。
圧力波の速さ は、水中の音の速さに近い値で、鋼管では 前後です。、 として流速を だけ急に止めると、 で、水の高さに直すと約 分です。流れをごくわずか止めただけでも、大きな圧力が出ることが分かります。この式が示すのは、圧力上昇は流速の変化の大きさに比例し、急に止めるほど(閉鎖時間が圧力波の往復時間より短いほど)最大になる、という関係です。
水撃作用の大きさは、次の条件で決まります。いずれも試験で問われます。
| 条件 | 水撃作用が大きくなるのは |
|---|---|
| 水圧管の長さ | 長いほど大きい(管の中の水の量が増え、止めるのが難しい) |
| 閉鎖時間 | 短いほど大きい(急に止めるほど大きい) |
| 管の中の流速 | 速いほど大きい() |
閉鎖時間が圧力波の往復より長い場合の目安は、( は管の長さ、 は閉鎖時間)で、管が長いほど、閉鎖時間が短いほど大きいことが式からも分かります。
水撃作用の対策は、次のとおりです。
| 対策 | 内容 |
|---|---|
| ガイドベーンをゆっくり閉じる | 流速の変化を時間で薄めて、圧力のピークを下げる |
| 管の流速を下げる | 管の太さを大きくして、流速自体を小さくする |
| サージタンクを置く | 水圧管路の手前で圧力の急変を吸収する |
| 制圧機を置く | 反動水車で、ガイドベーンの閉鎖に合わせて水を逃がし、管の水の流れの変化をゆるめる |
水を急に止めて圧力が上がる水撃作用に対し、水車が急に水を欲しがったときには、管の中の圧力が下がる向きに変化します。どちらの向きの変化も、管の強度と運転の安全に関わります。

- 弁体 円盤が回って水の通り道を開け閉めする
- 操作シリンダ 油圧で弁体を回す
- フランジ ボルトで管どうしを結ぶ
- 水圧管 水が通る太い鋼の管
入口弁は、水車や水圧管路の点検のときや、水車が停止したときに水を止めるための弁です。運転中の水量の調節は、ガイドベーンの役目です。
サージタンクの役割
サージタンク は、導水路(圧力トンネル)と水圧管路のつなぎ目の近くに立てる、水位が上下する塔です。圧力トンネルの末端に置き、水撃作用の圧力変化がトンネルへ伝わるのを防ぎ、水車への水の増減に対応します。
- 負荷遮断のとき:水圧管路へ行く水が減る。行き場を失った導水路の水がサージタンクへ流れ込み、水位が上がる。圧力の急上昇がトンネルまで伝わらない
- 負荷が急に増えたとき:水車が多くの水を欲しがる。サージタンクにためた水が不足分を補う

- サージタンク 水位が上下して圧力の急変を吸収する塔
- 頂部 水位が上がっても溢れない高さに造る
- 接続部 下で導水路と水圧管路が合流する
- 水圧管路 水車まで水を落として運ぶ鋼管
図10は、負荷遮断の直後に何が起こるかを、通常運転と比べたものです。
サージタンクの形には、いくつかの種類があります。試験では、差動式・小孔式・水室式といった言い方で出ます。
| 種類 | 特徴 |
|---|---|
| 単動式(単純式) | 単純な円筒形。構造は簡単だが、水位の振動が静まるまで時間がかかる |
| 制水口式(小孔式) | タンクと導水路のつなぎ目に細い穴(制水口)を設け、水の出入りに抵抗を与えて水位の振動を早く静める |
| 差動式 | 中央に立ち上がり管(ライザ)を持つ二重構造で、水位の変化に素早く対応しながら、水位の振動を早く静める |
| 水室式 | タンクの上部や下部に広い水室を設け、水位の上下幅を小さくする |
名前の呼び方は、本によって少し違います。制水口式を小孔式とも呼びます。どの種類も、水面は大気に開放されていて、密閉構造ではありません。水槽(ヘッドタンク)も同じく大気に開放です。「サージタンクはいずれも密閉構造である」という記述は誤りです。
解答と解説を見る
閉鎖時間を長くすると、遮断後も水が水車へ流れ続ける時間が長くなるので、回転速度の上昇(速度変動率)は大きくなります。一方、水の流れの変化がゆるやかになるので、水撃作用による圧力上昇は小さくなります。
答え:(2)
よくある質問
速度調定率と速度変動率は何が違いますか。
速度調定率は、定常状態での出力と回転速度の関係で、出力の変化の割合に対する速度の変化の割合です。速度変動率は、負荷遮断の直後に起こる一時的な最大の速度上昇を、定格速度に対する割合で表したものです。前者は系統での出力の分担や周波数の安定、後者は水車発電機の機械的な安全を考える指標です。
調速機はなるべく速く動かしたほうがよいのではありませんか。
速く閉じれば速度の上昇は抑えられますが、水撃作用が大きくなり、水圧管路を傷めるおそれがあります。調速機の閉鎖時間は、速度上昇と圧力上昇の両方が許せる範囲の中間で決めます。ペルトン水車のデフレクタのように、水車に当たる水と管の中の水を別々に制御する工夫もあります。
サージタンクと水槽は何が違いますか。
どちらも導水路の末端にあって水圧管路へ水を送ります。開水路や無圧トンネルなら水槽、水で満たした圧力トンネルならサージタンクを置きます。サージタンクは水位が上下することで、水撃作用による圧力の急変がトンネルへ伝わるのを防ぎます。どちらも水面は大気に開放されています。
思い出してみよう
答えを見る前に、まず自分で思い出してからタップしてください。
調速機は何を測り、何を動かして回転速度を一定に保ちますか?
回転速度を測り、ずれに応じてガイドベーン(ペルトンはニードル弁)を動かして、水量を加減します。並列前は速度を、並列後は出力を制御します。
速度調定率の式を、変化の割合の形で言うとどうなりますか?
出力の変化の割合に対する、速度の変化の割合です。小さいほど、周波数の変化に敏感に出力を変えます。
定格出力から無負荷にしたときの速度が なら、速度調定率はどう書けますか?
です。
速度変動率は、どんなときの何を表しますか?
負荷遮断のときの最大回転速度が、定格速度よりどれだけ高いかの割合です。
ガイドベーンの閉鎖時間を長くすると、速度上昇と水撃圧はどうなりますか?
速度上昇は大きく、水撃圧は小さくなります。短いと、その逆です。水圧管が長いほど水撃は大きくなります。
サージタンクは何のために、どこに置きますか?種類は?
圧力トンネルと水圧管路のつなぎ目の近くに置き、水位が上下することで水撃作用の圧力の急変を吸収します。単動式・制水口(小孔)式・差動式・水室式があり、すべて大気開放です。
まとめ
- 調速機は、回転速度を測り、ずれに応じてガイドベーンやニードル弁を動かして、水車の水量を加減する装置
- 速度調定率 。出力の変化に対する速度の変化の割合で、小さいほど出力が敏感に変わる
- 速度変動率 。負荷遮断のときの最大速度の上昇の割合
- 閉鎖時間が短いと速度上昇は小さいが水撃圧は大きく、長いと逆になる
- 水撃作用は、水を急に止めたときの圧力上昇。水圧管が長いほど、閉鎖時間が短いほど大きい。サージタンク(差動式・小孔式・水室式など。大気開放)が水位の上下で吸収する
- 調速機は並列前に速度を、並列後に出力を制御する。調定率の違う複数台は、周波数の変化に対し ずつ分担する
前の記事は 水車発電機とは、ガイドベーンや各水車の構造は 水車の種類と選び方 にあります。次は、水を高い所へ戻して電気をためる 揚水発電とは で、水力発電の全体を一周します。








